2013年06月22日

『エドワーディアンズ』装画について


『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』
ヴィタ・サックヴィル=ウェスト著 村上リコ訳
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 もうじき発売の新刊翻訳書です。一部のオンライン書店に書影がアップされました。内容紹介文もふくめ、随時更新されていくかと思います。なお、詳しい内容や出版の経緯についてはひとつ前の記事をごらんください。

 今回の装画として使用している絵は、ジョン・シンガー・サージェントによる「ウォリック卿夫人とその息子」1905年。制作年は時代設定にばっちりです。登場人物の誰かのイメージということではないのですが(主人公である美青年公爵セバスチャンの少年時代、と思ってください。いや栗色巻き毛じゃないけれど……)。

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 twitterでもすこし触れましたが、この絵のモデル、第五代ウォリック伯爵夫人デイジーというひとは、当時の上流社交界で数々の浮名を流した美人で、皇太子時代のエドワード七世の愛人でもありました。ちなみに19世紀の流行歌「デイジー・ベル」のモデルとも言われているみたいで、歌になぞらえて「デイジー、デイジー」と繰り返し女の子に呼びかける場面をいろんなところで見る気がします。「華麗なるギャツビー」にも出てきたし、あとはやっぱり「2001年宇宙の旅」で宇宙船のコンピュータがこの歌を歌う場面が忘れがたく……って、カバーの話からずいぶん脱線してしまいました。

『エドワーディアンズ』とは、エドワード時代の人びと、という意味。エドワード七世時代の上流社会の模様をうつしとった社交界小説です。ちょっとねたばれをすると、小説の冒頭に「この本のなかのいずれの人物も、完全に架空の人物ではない。」という堂々たるはしがきがあって、つまり登場人物にはそれぞれモデルがいます。メインのキャラクターには独自の名前が与えられているものの、それとは別に当時の有名人、貴族、政治家、芸能人、作家や画家などの名もどんどん出てきて忙しいくらい。このウォリック卿夫人と画家のサージェントも、名前だけ、何度か繰り返し登場します。

 19世紀末から20世紀初頭、華やかで贅沢でちょっと軽薄な、エドワード七世の仲間集団の空気を代表するような女性と、美しい子どもの肖像。何かしら縁とつながりを感じる表紙ができました。

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2013年06月21日

ヴィタ・サックヴィル=ウェスト『エドワーディアンズ』来週発売

 翻訳を手がけた小説が無事に本になり、来週発売されます。



『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』

ヴィタ・サックヴィル=ウェスト著 村上リコ訳
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 1905年の英国。美しい19歳の公爵セバスチャンは、わが身を縛る地位と伝統に鬱屈した思いを抱いていた。彼は恋愛に突破口を求め、〈社交界の花形美女(プロフェッショナル・ビューティー)〉である伯爵夫人シルヴィアとの関係に踏み出していく。ハウス・パーティーに招かれていた探検家のレナード・アンクティルは、そんなセバスチャンをよそ者の眼で観察し、一瞬の交流を果たす。絢爛たるロンドン社交期、大所領のクリスマス・パーティー、若き公爵がたどるさらなる愛の冒険、やがて訪れる新国王の戴冠式……。
 エドワード七世(在位1901〜10年)時代の英国を舞台に、みずからも男爵家の令嬢として上流社会に育った著者が、その体験をあますところなく描き出した実録的ロマンス。フィクションではあるが、20世紀初頭における英国上流社交界のようす、貴族や使用人の暮らしぶり、人びとの階級観や倫理観をうかがい知ることができる貴重なテキストでもある。

 原書は1930年初版。著者はヴィタ・サックヴィル=ウェスト(1892〜1962年)。ひとことでは言い尽くせない、とても多くの顔を持つ女性です。サックヴィル男爵家令嬢にして作家、詩人、造園家、ヴァージニア・ウルフの同性の恋人……そしてウルフの小説『オーランドー』のモデル。

 夫のハロルド・ニコルソンとは深い絆で結ばれながら、夫妻ともに婚姻外に同性との恋を求めました。ヴィタは1920年ごろにヴァイオレット・トレフューシスという女性との駆け落ち事件を起こしていて、その経緯を自身で記した秘密の日記を、息子のナイジェルが編纂した『ある結婚の肖像』も出版されています(平凡社から邦訳あり。ものすごく面白いのでぜひ増刷・再発してほしい)。

 ヴィタといえば〈シシングハースト〉、というくらい、ガーデニングの世界でもよく知られています。彼女はこの小説を出したあと(非常によく売れたのでたぶんその収入で)、シシングハースト・カースルという古い建物と地所を買い取り、夫と二人で庭造りにはげみました。現在ではナショナルトラストに管理され、彼女のつくった庭を見るためだけに世界各地から訪問するひとが絶えません。

 本人があまりにも個性的で魅力的なので、文学史上のゴシップめいた関心はひいてきたけれど、小説の翻訳はいままでありませんでした。あったら読みたいよ、ないなら訳させて、と企画書を書いて持ち込み、本邦初訳のはこびとなったわけです。

 サリー・ポッター監督、ティルダ・スウィントン主演の映画版『オルランド』(1992年)が大好きなこと。ヴィタの生家〈ノール〉に訪れたことがあり、こちらも大好きなこと。この小説をぜひ訳したい、と思った理由はさまざまあります。しかしやはり、長い伝統を持つ貴族の家に生まれ育った著者が、100年ほど昔の上流社会の暮らしぶりをこと細かに書いているということが大きな魅力でした。英国貴族と家事使用人の生活について、いろいろ読んだり考えたり書いたりするようになって10年くらいになりますが、『エドワーディアンズ』は小説ながら、風俗・習慣を知るソースとして利用している本にしばしば出会います。

 小説の翻訳は初めての体験で、ページ数以上に苦労してしまいました。ぜひお手に取っていただけると幸いです。
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2013年06月16日

2013年英国旅行(1)5/27〜28 ウィンザーから北へ

 途中で力尽きない程度にさらっと旅行メモを記しておこうと思います。よろしければお付き合いください。

 5月27日、ヴァージン・アトランティックで成田からヒースロー空港へ。到着後すぐ、レンタカーを借りてウィンザーに向かう。

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 「メルキュール・ウィンザー・カースル・ホテル」にチェックイン。入り口は狭そうに見えるが内部は奥行きがあって、通路は入り組み、いかにも古い建物を改装したという雰囲気。部屋は広くて綺麗で、浴室にはバスタブもついている。なかなかおすすめ。

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 なんと宿の階段ホールに使用人呼び出しベルが! もちろん飾りだけど、初日からなんとなく幸先いい気がする。……などと思うのはきっと自分だけ(笑)。

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 夕食は近場の「カーペンターズ・アームズ」へ。建物、内装は伝統的で、サービスは感じがよく、味も悪くなかった。夕食を出すパブと飲むだけの店があるんだと知ったのは渡英3回目くらいのときだったっけ。

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 すでにかなり日が長く、夜八時くらいでも明るい。ウィンザー城の坂の下のヴィクトリア女王像。

 翌28日、チェックアウトは11時までなので、部屋はそのままで昼前まで徒歩で観光。あいにくの雨で、この日が一番寒かったかも……。

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 〈ウィンザー城〉。勲章授与の儀式に使われるホールや大きな宴会広間は壮麗で、公式儀礼の場という印象。とはいえ、堀の部分が個人宅のお庭のように手入れしてあるあたりは、「女王のおうち」感をかもし出していた。

 昨年がエリザベス二世の即位60周年(ダイヤモンド・ジュビリー)、そして今年は戴冠式から60周年。先の王が亡くなるとすぐさま後継者が即位ということになる(これは貴族の爵位も同じ)けれど、戴冠の儀式はすこし間をあけるので、記念の年がずれるのだ。ショップには戴冠式にまつわる書籍、図録の類がいろいろと出ていた。

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 ウィンザーの大通りの目立つ一角にこんなパブがあるのが目にとまる。ケンブリッジ公爵夫人、2011って、ウィリアム王子と2011年に結婚したキャサリン妃のこと。すばやいというか商魂たくましいというか……。いやまあ、昔から全体的にこんな感じだったのだろう。あやかり商法も100年経てばりっぱな伝統。

 でもクチコミサイトを見てみたら「カーペンターズ・アームズ」よりランキングは上だった。しまったかしら(笑)。

 ウィンザーのホテルをチェックアウトして車で北へ向かう途中で〈ウォーバーン・アビー〉に立ち寄る。豪華で美しかったが、雨にたたられて敷地内の徒歩移動がままならず、外観の写真を撮りそこねてしまった。

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 ベッドフォード公爵邸の代々の主邸で、「アフタヌーン・ティー発祥の地」。ここで昼食にした。カフェテリア形式のふつうのティールームではあるけれど、ひとつひとつのテーブルに、なまの薔薇が飾ってあったところに、そこはかとなくもてなしの心というか矜持のようなものを感じた。
ラベル:2013年英国旅行
posted by rico at 16:04| 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月14日

2013年も英国に行ってきました

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 ウィンザー城、雨の日の衛兵交代

 5月27日から6月12日まで、英国旅行に出かけていました。ことしの旅程はこんな感じ。

5/27    ウィンザー
5/28〜30 ベイクウェル(ピーク・ディストリクト)
5/31〜6/1 ロンドン
6/2〜6/4 グラスゴー
6/5    フォート・ウィリアム
6/6〜8 ポートリー(スカイ島)
6/9    オーバン
6/10   ヒースロー

 ウィンザーからロンドンまでは両親といっしょ。ことしはヒースロー空港に着いてすぐ車を借りてウィンザーからピーク・ディストリクトに直行してみた。31日に空港で車を返してロンドン入り。そして両親をヒースロー空港から送り出したあと、猫丸さんと二人で国内線でグラスゴーに飛び、車を借りてスコットランドの西ハイランド方面を北上してスカイ島をめぐった。おおむねずっと晴れていて、風景を堪能できたのがありがたかった。ネットはほとんどの宿でつながったし、空港やカフェでもかなりwifiが使えるようになっていた。ということが幸か不幸か、日本から次々とやりかけの仕事がメールで飛んできて宿や空港ではふつうに働いていた(笑)。
 旅の模様はtwitterでリアルタイム報告していた。途中で追いつかなくなってるので補足してまとめていきたい(そろそろ狼少年)。


 あと、今回の旅の目的のひとつはベン・ウィショー君の出演する舞台を見ることだったのだけど、なんと劇場前で偶然ご本人に遭遇してサインまでいただいてしまう幸運にめぐまれた! 舞台のことや映画のロケ地めぐりの話題はもうひとつのブログのほうにあげていくつもり。
 まずはご報告まで。新しいお仕事もぼちぼちと。
posted by rico at 21:02| 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月23日

よりぬきtwitter 2013年4月上旬

twitterの自分のつぶやきから、ブックマークしておきたいものをまとめ投稿してみる。
より抜いてない生ログはtwilogで。http://twilog.org/murakamirico
ベン・ウィショー君関係は専用ブログで。http://benwhishaw.seesaa.net/
しかしより抜いてみてわかるけど、われながら毎日毎日つらつら書きすぎかも……ちょっと控えよう……(っていつも言ってる)



















ラベル:twitterから
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2013年05月12日

映画「ヒステリア」見たよ! おすすめ!



http://www.hysteria.ayapro.ne.jp/

 19世紀末ロンドン(予告ムービーでは1890年になってるけど本編字幕では1880年)。やる気はあるが先進的すぎて周囲とうまくいかない若き医者モーティマー・グランビル(ヒュー・ダンシー)が、当時、女性の心の病気とされていた「ヒステリア」を局部マッサージで治療するダリンプル医師(ジョナサン・プライス)に雇われる。医師には二人の娘がいて、姉は女性の権利擁護と社会奉仕活動に邁進するシャーロット(マギー・ギレンホール)、妹はおしとやかで可愛いエミリー(フェリシティ・ジョーンズ)。なんやかや紆余曲折いろいろあった末、グランビルは友人で貴族で発明家のエドモンド・セント・ジョン(ルパート・エヴェレット)とともに電動バイブレータの開発を思いつく。

 とてもおもしろかった! さいしょにお決まりの「この物語は真実に基づく」が出るんだけど、すこし遅れておずおずと「本当です」って文字が出てくるの。すごく可愛く。そんなふうな、神経の行き届いたくすっと笑える演出が全編をとおして効いていた。というか、衣装も美術も小道具も、出てくるひとたちもみんな可愛い。せりふは小気味よくしゃれていて、ストレスは最小限で、でも頭のすみでは女子の歴史についてちょっと考えてしまって、最後には気持ちよくなれる。良い映画だと思う。

 なにより、好きなひとにはたまらないヴィクトリアン・トリビアがいっぱいなのが嬉しい。いきなり細菌説とリスターの消毒法をめぐってのやり取りから始まって、怪しげな売薬についての嘆きとか、エドモンドの部屋に初めて電話が開通して「電話に」「女王陛下に」「女王陛下への電話に」なんてお洒落な乾杯をしてみたり、エミリーと初めて出会ったときの会話が「ご趣味は? 地質学? 植物学? 蝶の研究ですか?(当時のお嬢さんの定番みたいなラインナップ)」「いえ骨相学ですの」って! そもそも姉妹の名前がシャーロットとエミリーって! 「婦人参政権運動のパンフレット配ってたら逮捕されちゃって」はちょっぴり時代も早いし用語法も微妙な感じがしたものの、それはそれ。ああ楽しかった!

(パンフレット買っちゃったんだけど、セクシュアルな方面のコラムが充実しているかわりに19世紀英国ならではの風俗時代背景こねたはほとんど出てこなくて、ちょっと拍子抜けしてしまった……なんなら言ってくれれば……もごもご)

 まだ都内では始まったばかりで、全国順次公開みたいなので、わたしの本とかこのブログをわざわざ見に来てくださるような趣味をおもちの皆様はぜひぜひどうぞ。
posted by rico at 19:39| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年05月10日

国書刊行会版『ジーヴス』シリーズ電子書籍特設サイトにコラム寄稿&近況

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 ヴィタ・サックヴィル=ウエストの生家ノールの館。昨年秋訪問。

http://www.ebookjapan.jp/ebj/tag_genre.asp?genreid=30691

 表題のとおり、電子書籍販売サイトのebookjapanにて国書刊行会版の「ジーヴス」シリーズの電子版販売がはじまり、特設サイトができました。せんえつながらコラムを寄稿しました。楽しんで書きました、よろしければどうぞ。声優にして超読書家の池澤春菜さん、『プリーズ・ジーヴス』の漫画家・勝田文さんのメッセージを読めますよ。



 もうすぐ発売のDVD『天才執事ジーヴス』、楽しみです! つづきが出るかどうかは売り上げ次第なのでまだまだ応援。

 なんだかジーヴス&ウースター&フライ&ローリーのサイトみたいになってきましたが、仕事もしております……。

 ヴィタ・サックヴィル=ウエストの小説『エドワーディアンズ』を翻訳し、河出書房新社より6月刊行予定でがんばってます。また追々発信していきますね。

 来週に迫りましたが5月18日(土)に東京都仙川の白百合女子大学にてイギリス児童文学会東日本支部・春の例会でお話させていただくことになりました。会員以外のかたも参加費を払ってお入りになれます。ええもう緊張しております。

 枢やなさんのコミック『黒執事』毎月お手伝いしています。コミックは16巻が発売中。寄宿学校編です。というかすっかりクリケット編です。徹底して新しいことに挑戦し続ける姿勢がほんとうにすごいです。

 山名沢湖さんのコミック『花ちゃんとハンナさん』も資料出しでお手伝いしてます。講談社の隔月コミック誌「キスプラス」で連載中。4月売りの5月号が発売中。エドワーディアンの英国メイド・ハンナさんが、現代日本のメイド喫茶で働く花ちゃんのもとに現れて……。ふわふわのんびりにみえて芯はしっかり、心を込めて描かれた可愛らしい作品ですよ! 応援いただけますと幸いです。

 そして5月の下旬から6月の上旬までまたすこし留守にする予定。もろもろよろしくお願い申し上げます。
posted by rico at 18:55| 仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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