2012年09月09日

シャーン・エヴァンズ著『メイドと執事の文化誌』9月下旬発売予定。

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図説 メイドと執事の文化誌
シャーン・エヴァンズ著 村上リコ訳 原書房
【amazon】 / 【楽天ブックス】 / 【紀伊國屋書店】

 今月下旬に出る予定の新しい本です。翻訳を担当しました。

 原書は2011年秋に発売されたばかりの新しいもので、原題は“Life Below Stairs: In the Victorian & Edwardian Country House”。19世紀のヴィクトリア女王時代から、20世紀初頭のエドワード七世時代までの英国を対象とし、貴族や地主の大邸宅における「階下の暮らし」、つまり家事使用人の生活について書かれた本です。

 著者のシャーン・エヴァンズ氏は、ヴィクトリア&アルバート博物館、デザイン博物館、そしてナショナル・トラストに勤務した経験のある方で、原著の版元もナショナル・トラストブックス。ということで、自然や景観、歴史的建築物を保護するボランティア団体である「ナショナル・トラスト」とは非常にかかわりの深い内容になっています。

 ナショナル・トラストは、現在では300以上の歴史的な建物を保有しているそうです。宮殿のような有力貴族の大豪邸から、牧師館や農場や、小地主の小ぢんまりしたお家まで。こうした家には、過去にはそれぞれに異なる私生活があったはずです。建物そのものだけではなく、日記や帳簿や、そこに暮らした人々の口述記録も大切に管理されています。著者はそのような、はかなくもめずらしい資料に触れて、過去の日常生活の再現を試みています。

 写真が主役の本ではありませんが、図版は120点ほどおさめられています。執事の仕事場、ヴィクトリア時代のキッチン、使用人の寝室や浴室などの写真をカラーで豊富に掲載しているのは、ナショナル・トラストの本ならでは。「よそゆき」の顔をした豪奢な応接間や大階段を自慢にする家は多いものの、こうした「ふだん使い」の部屋や「使用人の領域」を残している邸宅は少ないので、こうしてまとめて鑑賞できるのは、読者として非常に嬉しいものです。

 初めに声をかけていただいたときには監修を、というお話だったのですが、このような原著の内容に魅力を感じたため、ぜひ自分で翻訳もさせてほしいと立候補しました。楽しくも大変な道のりではありましたが、無事に完成の運びとなりました。どうぞよろしくお願いします。

 訳をすすめるほど英国に行きたくなり、校正を繰り返すほどナショナル・トラスト熱が募って募って困りました(笑)。というわけで、もう少ししたら二週間ほど旅に出てきます。本書に登場した場所もいくつか訪問する予定。近年ではネットが使える宿が多いので、ツイッターで現地報告できたりするかもしないかも。
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2012年09月05日

『黒執事』ファンにお薦め・勝手に「ふくろうの本」フェア(3)

 みんなが忘れた頃にそっと恥じらいつつ更新ですよ…。完結編。
図説 シャーロック・ホームズ (ふくろうの本/世界の文化)

図説 シャーロック・ホームズ

小林 司・東山 あかね
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76184-8
世界一有名な探偵シャーロック・ホームズが活躍したのは、主にヴィクトリア時代末期の1880年代あたりから、20世紀初頭のエドワード時代にかけて。この時代の風物や習慣のことなら、シャーロック・ホームズファンのみなさまに脱帽。当時のロンドンの様子、ホームズの食べたもの飲んだもの、好みの音楽、報酬額はどれくらいとか、馬車に地下鉄に郵便に薬…。お話やキャラクターの魅力もさることながら、ついつい日常のあれこれに目が行ってしまう。年表、訳名対照リストもたいへん重宝。

図説 不思議の国のアリス (ふくろうの本)

図説 不思議の国のアリス

桑原 茂夫 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76093-3
アニメ版『黒執事II』のオリジナル番外編映像「シエル・イン・ワンダーランド」の元ネタは、もちろんルイス・キャロルによるナンセンス・ファンタジー『不思議の国のアリス』。原典の奇想天外っぷりにもぜひ直接触れて欲しいけれど、そもそもの初めに本のかたちになったときからイラストとは切り離せなかった作品だけに、ヴィジュアル解説本はぜひとも一冊持っておきたい。いろいろな画家が手がけた挿絵はもちろん、キャロルが趣味で撮影していた写真についての章もある。このお話がささげられたアリス・リデルと姉妹たち、その他の少女友達の美しい写真が楽しめる。



図説 マザーグース

藤野 紀男 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76092-6
アニメ版の「ロンドン橋落ちた…」も、原作サーカス編の「トムは笛吹きの息子…」も、「マザーグース」と呼ばれる数多くの歌や詩の一種。英米人なら誰もが小さな頃から口ずさんで育つという、こうした伝承童謡を、発祥の歴史や種別、文化とのかかわりから数々のイラスト表現まで紹介した本。コンパクトにみえてなんと100以上の作品が取り上げられていて、巻末には原文を収録してある親切設計。著者はマザーグース学会会長という権威ながら、文章は気さくでやさしく、とても読みやすい。信頼の入門書。

あと、『黒執事』といったら『図説 切り裂きジャック』でしょ!なんでとりあげないの?という質問への答えは、えーと…品切れだからです! 無念! 同著者の『切り裂きジャック 闇に消えた殺人鬼の新事実』(講談社文庫・2004年)が見つけやすいかも。
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2012年06月24日

『黒執事』ファンにお薦め・勝手に「ふくろうの本」フェア(2)

きのうのつづきです。




図説 英国貴族の城館 カントリー・ハウスのすべて 新装版

田中 亮三 文・増田 彰久 写真
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76110-7 ● Cコード:0322
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
英国の歴史ある大邸宅に住み続けるオーナーと親交を結び、「生活の場」「家族の家」としてのカントリー・ハウスを特に愛した著者による無二のガイド本。堂々たるホールや大階段、ギャラリー、書斎、応接間に食堂など、それぞれの部屋の機能を美しい写真とともに紹介している。使用人の世界や肖像画についての解説も。




図説 英国ナショナル・トラスト紀行

小野 まり 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76088-9 ● Cコード:0325
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
英国ナショナル・トラストとは、自然の景観や歴史的建造物を保存するチャリティ団体。歴史の逸話を秘めた古城、有名人の旧邸、映画のロケ地になった場所など、邸宅ごとの情報を掲載している。アニメ『黒執事』や『英國戀物語エマ』で取材に訪れた家も。「過去のある時点における暮らし」を考証し、再現し、保存し、展示しようとするナショナル・トラストの試みは、『英国貴族の城館』の著者とは関心の方向性が異なる。掲載されている場所は上記二冊でかぶっていないので、併読がお勧め。




図説 ヨーロッパ服飾史

徳井 淑子 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76140-4 ● Cコード:0322
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
1章ではまず西洋の服飾史の流れを、2〜3章では色や柄、ファッションのスタイルと社会の関係を、そして4章では性別と服装(異性装など)、下着の変遷、子ども服といった魅力的なトピックを解説。個人的にはもちろん4章に興味津々。



図説 英国ティーカップの歴史 紅茶でよみとくイギリス史
Cha Tea 紅茶教室 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76189-3 ● Cコード:0372
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
お茶とティーカップをとおして見る英国文化史。アフタヌーン・ティーをはじめとした茶の文化が花開いた18世紀〜19世紀の比重が多め。さまざまなブランド、年代のアンティーク茶器の写真が美しく目の保養。非常に珍しい雑誌挿絵などの図版もあり。
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2012年06月23日

『黒執事』ファンにお薦め・勝手に「ふくろうの本」フェア(1)



図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔

村上リコ
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】

 おかげさまで『図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔』無事に発売の運びとなりました。ありがたいことに、帯には『黒執事』の枢やなさんにコメントとイラストを寄せていただきました。

『図説 英国執事』が仲間に入っている河出書房新社「ふくろうの本」は、数多くの図版を使い、いろいろなテーマについて平易かつ詳しく説明してくれるシリーズです。「図版たくさん」という以外には構成上の縛りは少ないようで、構造、レイアウト、難易度はさまざまです。

 私も以前より、少しでも気になるトピックについて「ふくろうの本」から出ていればまっさきに購入する、くらいの勢いで愛読してきました。初めて河出の編集さんと打ち合わせをしたとき、帰り際に「ふくろうの本で欲しいものがあったら差し上げますよ、英国関係だったらアレとかコレとかどうですか……」と言っていただいたのに「あ、持ってます。それもあります。買いました!」と、ほとんど網羅してしまっていたぐらいです。

 そんな「ふくろうの本」シリーズには、コミック『黒執事』の世界観・時代背景に魅力を感じておられるファンの皆様がおもしろく読めるような本が、たくさんあります。ということで、せっかくですから勝手に「ふくろうの本」応援フェアを開催させていただきます。ひょっとしたら書店で手に入りにくいものもあるかもしれませんが、注文したり図書館にリクエストしてみてください。

 まず最初は、これまでにブログや記事やいろんなところで推薦してきたものばかりですが、ほんとにいい本なのでしつこくおすすめ。あと、自分の本の宣伝はご容赦ください(笑)。



図説 ヴィクトリア朝百貨事典

谷田 博幸 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-72665-6 ● Cコード:0322
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
「執事は新聞にアイロンをかけるらしい」と聞いたことがある人もいるはず。でも、19世紀のアイロンってどんな形でどう使う? 当時は麻薬が合法だったって本当? ノアの方舟のおもちゃって? 電報、電話、電気に電灯の発明と普及具合は? 「モノ」で知るヴィクトリア時代に興味はつきない。




図説 英国レディの世界

岩田 託子・川端 有子著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76158-9 ● Cコード:0339
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
『ヴィクトリア朝百貨事典』の中流レディ版。英文学・児童文学の研究者二人による、「女こども」の生活事典。髪の毛のアクセサリー、舞踏会にロマンス小説、イースター・エッグ、クリスマス、そして喪服……。少女時代から結婚、奥様稼業、子育て、そして未亡人になるまで、当時の中流女性たちがたどった人生の段階を追ってゆく構成がわかりやすい。



図説 イギリスの歴史

指 昭博 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76010-0 ● Cコード:0322
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
歴史画、諷刺画、写真がたっぷりの、目で読む英国史。ひとつひとつの図版にかなり長めの詳しい説明文が添えられていて勉強になる。コラムとあわせてかなりの情報量。年表や系図、人名索引、地図もしっかりついている。英国の「通史」に興味が出たら最初の一冊に。



図説 英国メイドの日常

村上リコ 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-761640 ● Cコード:0339
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
百年前の英国では、大多数の女の子がメイドとして働いていた。「ふつうの女子」であったメイドの暮らしを、さまざまな図版と証言から探り出す。ハードな仕事のタイムスケジュールから、給料、余暇、ピンクや水色のカラフルな制服、友情、そして恋や結婚まで。



図説 英国執事 貴族をささえる執事の素顔

村上リコ 著
定価1,890円(本体1,800円)
ISBN:978-4-309-76192-3 ● Cコード:0339
【amazon】 / 【紀伊國屋書店】 / 【楽天ブックス】
フィクションの登場人物としてはかなりなじみが深いのに、「実際のところはどうだったのか?」があまり知られていない執事について、起源から実態まで洗い直す。個人的なお勧めポイントは、第2章「主人の生活」と第8章「執事と主人」。雇い主の存在なくして執事の姿も見えてこない。


(……全3回の予定は未定)
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2012年06月17日

twitter画像集(2012/5/31〜6/3)男性使用人編

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図説 英国執事〜貴族をささえる執事の素顔 (ふくろうの本/世界の文化)
村上 リコ

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309761923

 新刊『図説英国執事』、もうあと少しで皆様のもとにお届けできることかと思います。どきどきです。少しでも本の中身の雰囲気がわかるよう、用意したけど使わなかったこぼれ画像をtwitterにてご紹介してきました。ここにまとめておきます。

5/30
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「ジョーンズ氏のお義母上が『一週間すごしに』やってきた」。わんこにオウムに、大量のトランク。迎えるメイドも、御者(二重ケープのコート)も、ちっちゃなページボーイも大変。『パンチ』1858年。 http://t.co/rhdU3038
posted at 20:07:35



5/31
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「実利とエレガンスの統合」きのうにつづいて『パンチ』1858年。スカートをふくらますクリノリンの全盛時代、傘はこのくらいないとダメだった?物売りに道路掃除、路上で働く子たちもちゃっかりと雨宿り。舞踏のようなフットマンの脚さばきが可笑しい。 http://t.co/3Sx3BCtk
posted at 18:50:57


18世紀くらいからかな、伝統的な男性の正装に合わせる靴はパンプス。正装姿の執事やフットマンもよくはいている。いまでいうバレエシューズみたいな形で、ピカピカのエナメル革(パテントレザー)だったりして、リボンがついていてフェミニンで可愛い。
posted at 18:53:24



6/1
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きょうは1895年の『パンチ』から。「ジェンキンズ、今朝は<遅れた>じゃないか」「はい御主人様、わたくしが<寝床に身をつつみすぎ>ましたことをおわび申し上げます」ことばづかいは厳密にしたい執事。(寝坊した事実は変わりません) http://t.co/g8S0uwXb
posted at 18:20:38



6/2
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ごく初期の自動車とお仕着せ姿の運転手。トム・ブラウン画のポストカード、たぶんエドワード時代のもの。 http://t.co/IzmHHqBq
posted at 20:13:49



6/3
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1883年の家庭雑誌のファッション通信ページから。飲み物を持ってきてくれるフットマンは、レディにとってアクセサリーの一部みたいなもの? http://t.co/he5UEdbw
posted at 19:12:06


……ただし、掲載誌は英国のほどほど中流ファミリー向けで、専門の女性誌でもなければパリの高級ファッション誌でもないので、版画のクオリティやドレスそのものは、そこはかとなくあかぬけない感じがしないでもない。
posted at 19:12:38



 ……なんというか、せっかく帯にすばらしいセバスチャンが降臨してくれたというのに、どうもそういう「あくまで執事」方面とか「ディナーのあとに謎解き」方面とか、「見た目若くて美しくて格好いい系執事」に欠けるような印象を受けるかもしれません。正直それは否定できません。かわりにといってはなんですが、「ハンサムでふくらはぎが格好いい系フットマン」(執事の部下で、お仕着せ姿で給仕などをする若手の男性使用人)や「初老で体格と血色がいい系執事」はいつになく充実していることをお約束いたします。
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2012年06月14日

『図説 英国執事』情報更新&セバスチャン降臨

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図説 英国執事〜貴族をささえる執事の素顔 (ふくろうの本/世界の文化)
村上 リコ

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309761923

『図説 英国執事』公式サイトの書誌情報が更新されました。本文の抜粋を少し読めます。タブをクリックすると目次の項目も見られます。よろしければごらんください。

 注目は「コミック『黒執事』作者枢やなさん推薦」の一文。実は今回の本の帯に、枢やなさんの推薦コメント&イラストをいただくことができました。ありがとうございます! 描きおろしセバスチャンが降臨ですよ。ファンの皆様は必見です。

 かためのラインナップである河出書房新社「ふくろうの本」シリーズの帯に、コミックのイラストを登場させるというのは、前例のない試みだそうです。どきどきしますが「お初いただき」ということで、むしろ光栄に思っております。

 そして、コミック売り場担当の書店員の皆様におかれましては、ぜひ先月発売の『黒執事』最新14巻の隣に並べてくださいますと幸いです!
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2012年06月09日

『図説 英国執事』カバーについて

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図説 英国執事〜貴族をささえる執事の素顔 (ふくろうの本/世界の文化)
村上 リコ

 再来週あたりに発売予定、きのうアマゾンのサイトに画像がアップされました。新しい本『図説 英国執事』のカバー写真についてのお話です。

 当初は『図説 英国メイドの日常』と対になるように、できればヴィクトリア時代の風俗画で、ちょうどいいのがあればとあちこち探していました。しかし覚悟はしていたものの、本の表紙という役割にぴったりきてくれるものがなかなかない。執事ってどこまでも脇役なもので……。

サイモン・エルウェス「サー・リチャード・サイクス、 七代スレッドミア准男爵の肖像」1936年

 ↑最後まで迷ったのはこれ。絵としてはかなり好きで。仕事中の雰囲気が出ていて良いし、壁の色合いもシックですてき、奥にはもうひとり従者らしき人影もある。画風や背景の感じも『英国メイドの日常』と相性がよさそう。でも、主役はあきらかに赤い狩猟着の准男爵。「何の本かわかってもらえないかも」「執事と読者の目線が合わない」という指摘でペンディングに。

マナーハウスPRバナー

 その後、エドワード時代再現リアリティ番組『MANOR HOUSE (Edwardian Country House)』のスチル写真を担当さんに見せたところ、編集部の反応が非常によいとのことで、画像エージェント経由で借りることになりました。(「眼鏡執事!」と食いついた方がいたとかいないとか……笑)

 ただ、校正の最終段階に近いところで急遽決まったこともあり、今回の本の本文には出てきません! ファンの方、すみません。

 同時代の絵や写真ではなく、本職の執事ではない、21世紀の再現テレビ番組の出演者の肖像、ということで少し迷いもありました。しかし、出来上がってみたら、やっぱり映える。みんなの期待する「英国執事」のイメージを背負って、その役割を演じ切ったひと。こっちをしっかり見てくれて、扉をあけて、大邸宅の世界に招き入れてくれる。

 結果的に、カバーと中身がなかなか釣り合う出来になったんじゃないかと思っております。実際どうなのか、ぜひ実物で確認していただければと思います。

(それにしてもミスター・エドガーご本人は、自分の写真が日本で本のカバーになってるなんて、知る由もないにちがいない……)
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2012年05月24日

『図説 英国執事〜貴族をささえる執事の素顔』予約受付開始

 http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309761923
(出版社公式サイト)

 新刊『図説 英国執事〜貴族をささえる執事の素顔』河出書房新社より六月後半に発売予定です。カバーデザインなどもすてきに固まり、ほとんど完成というところまでこぎつけました。表紙画像を早くお見せしたいところですが、いましばらくお待ちくださいませ。

 アマゾン、HMVローソン、e-hon、セブン&アイなど一部のオンライン書店では予約受付が始まっております。どうぞよろしくお願いします。

図説 英国執事 ーー貴族をささえる執事の素顔 (ふくろうの本/世界の文化)
村上 リコ
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 ↑リンク先はamazon。

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 なんとなく落ち着きどころがなくて使いそびれたポストカード。1914年8月28日ノリッジの消印。……って、第一次世界大戦はじまってるじゃないですか。
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2012年05月17日

『図説 英国執事』河出書房新社より6月発売予定。

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 こんにちは。村上リコです。おひさしぶりです。

『図説 英国メイドの日常』に引き続きまして、昨年よりずっと、表題の本に取り組んでおりました。(仮)がとれてタイトルが確定しましたのでご報告いたします。「〜の日常」とかなしです。『図説 英国執事』。直球です。

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309761923

『メイド』と同様、河出書房新社ふくろうの本、図説シリーズになります。ページ数が確定していないのですが、また少しだけ増える予定。

 19世紀後半から20世紀初頭を中心に、執事と男性家事使用人の実生活にまつわるあれこれを書きました。「執事ってそもそもなんなの? 何をする人?」「何を着て、どんなところに住んで、何を食べていたの?」「出世の方法は?」「働きながら何を考えてたの?」「主人や坊ちゃま、奥様・お嬢様についてどう思う?」などなど、素朴な疑問からディープな話題まで、さまざまな同時代のヴィジュアル資料と証言をもとに構成しています。

 内容の詳細や、載せられなかったこぼれネタなど、追々ご紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

 身辺報告はツイッターにて。ほぼ毎日つぶやいてます。

 https://twitter.com/murakamirico

※上の写真はロンドンのパブ「アイ・アム・ジ・オンリー・ランニング・フットマン」の看板。
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2011年12月24日

『英国メイド マーガレットの回想』発売中とQ&A

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『英国メイド マーガレットの回想』
マーガレット・パウエル著 村上リコ訳
定価1,785円(本体1,700円)
ISBN 978-4-309-20582-3 ● Cコード 0098
【amazonで購入】 / 【bk1で購入】 / 【楽天ブックスで購入】

 おとといあたりから一部の書店には並び始め、オンライン書店からもぼちぼち発送されているようで、楽天ブックスに予約していた本が届いたよ、と実家の父から電話がありました。両親から聞かれたことを、この機会にQ&Aっぽくまとめてみましょう。

父「このページ端の注釈は原著にはないもの?」
私「ないです。私が書きました」

「学術書のようにキッチリしたものじゃないけど、これはこれでいいね。昼食をディナーと呼ぶところもあるんだね。周りの人に聞いたらみんな知らなかったよ」とのことです。それはまあ、英国の習慣の話ですからね。(ちなみに父はヒューマンリソースがどうとかワークシェアリングがこうとか労務管理論が云々とか、よくわからないけれどそういう畑で長年教えている人で、外国の労働事情にも関心を持っています)

母「まだ最初のほうしか読んでないけど……この、日曜学校の話からいきなり始まるのには何か意図があるのかな?」
私「この本はもともと1968年に出たもので、ウーマン・リブだとか性の解放が関心を集めていた時期なので、そういうことをあけすけに語ろうっていう世相の影響もあるんじゃないかと」

 さわりだけでも読んでいただければわかると思いますが、「日曜学校の話」は、しょっぱなからなかなか強烈なエピソードです。(ちなみに実家の母のお部屋にはマリア様の像があったりします)

 そんなわけで、英国文化やメイドの生活に興味があるお若い方はもちろんのこと、うちの両親のように幅広い年齢・立場の方、いろんな興味関心を持つ方にも楽しんでいただけそうな『英国メイド マーガレットの回想』。どうぞよろしくお願いいたします。
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2011年12月21日

twitter画像集(12/1〜7)「キッチン・メイド」編+近況

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「Fellows! 2011-DECEMBER volume 20」

 現在発売中の雑誌「FELLOWS! vol.20」に、山名沢湖さんの新作短編漫画「メアリのカンバス」が掲載されています。100年くらい前の英国的な舞台で、メイドが主人公のお話です。資料協力させていただきました。どうぞよろしくお願いします。

ミズウミ電報ブログ版 「メアリのカンバス」

 作品への思いを山名さんがブログに綴られています。構想はかなり前からあり、時間をかけて丁寧に仕上げられたお話です。ぜひご覧下さい。

eikokumaid
『英国メイド マーガレットの回想』
マーガレット・パウエル著 村上リコ訳
定価1,785円(本体1,700円)
ISBN 978-4-309-20582-3 ● Cコード 0098
【amazonで購入】 / 【楽天ブックスで購入】

 数日中に新刊『英国メイド マーガレットの回想』が発売になります。なるべく多くの方に、お若い方にも手にとっていただきやすいよう、本体価格が改定されました。当初お知らせしたものから100円さがって1,785円(本体1,700円)。それにともない発売日も少しずれ込むことになりました。申し訳ありませんがよろしくお願いします。

 以下はtwitterにあげた画像です。

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「使用人の訓練法―自分でやるに任せましょう。ガスストーブがあれば、不安と出費を大いに抑えられます」で、この体たらく。http://t.co/pieoig53
posted at 20:14:37



※消印はなかったのですが、おそらく1900年前後かと思われます。

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『図説 英国メイドの日常』P23左下、P122左上の図版と同じシリーズのポストカード、消印は1902年。当時のロンドンでよく見られた光景を描いたもので、ほかに辻馬車、花売り、新聞少年なども。 http://t.co/jhlPO9ca
posted at 20:25:44



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「戸棚の中の骨(=隠しておきたい身内の恥)」というマンガ。「パンチ」1884年9月27日掲載。女主人がきたのであわてて彼氏を戸棚に押し込み「あたしの彼は救世軍ではないです。それに反対する『骸骨軍』に入ってますから!」 http://t.co/IHb0KTSo
posted at 19:06:59


小さな家のコックやメイドというと、彼氏(警官や軍人)を引き込んでパイを食べさせる生き物だと思われていたようで、この種のマンガやポストカードはものすごく多い。どこまで実情を反映したものかは『英国メイド マーガレットの回想』を読めばわかる…かもしれません。
posted at 19:14:30



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『英国メイド マーガレットの回想』にちなんで、キッチンの写真を。イーストボーンにある「ショップ博物館、私たちの昔の暮らし(How We Lived Then)」から、「エドワード時代のキッチン」。2008年訪問。 http://t.co/WVCjGijj
posted at 19:16:22


ショップ博物館は、小さな小さなタウンハウスに異常なまでにぎっしりと昔のモノが詰め込まれた、なんかすごい空間でした。時代やジャンルごとに商店風にディスプレイしてあります。あとメイドは本物じゃなくて人形です。
posted at 19:27:16



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ノーフォークの17世紀の邸宅、フェルブリッグ・ホールのキッチン。天井を高くしたり窓を足したり、19世紀のあいだに改装が加えられてきた。奥にあるクリーム色のレンジは「アーガ(Aga)」。 http://t.co/XlJcnugb
posted at 20:53:23


アーガは商標名。1920年代に登場したガス調理器具。オーブンとクッカーが合体している。古いタイプでも非常に人気があって、お洒落な中古アーガ専門店を見かけたこともある。何年も前、はじめてこの三文字に出くわしたときには、何のことかさっぱりわからなくて困惑した。
posted at 21:07:23


英国カントリーサイドを舞台にした家庭小説のジャンルを「アーガ・サーガ」と呼ぶらしい。へえ〜。http://t.co/V4U4qrDU
posted at 21:17:34


ひとつおりこうになったところで、仕事にもどります。
posted at 21:19:58



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可愛いキッチン雑貨屋のショーウィンドウにAGAティーポットを発見。2010年、北ヨークシャーのサースク(Thirsk)という町に泊まったときの写真。 http://t.co/v8nov2hT
posted at 19:54:48


しかし、同じ町のB&Bに泊まっていても、あちこち郊外を飛び回りすぎて、可愛いお店があいてる時間にちっとも帰ってこられないといういつものパターン…。
posted at 19:59:14


サースクは広すぎず小さすぎず、田舎町だけれどインフォメーションや本屋や商店もきちんとあって、町の人もやさしくてパブやレストランもなかなかおいしくて、とっても過ごしやすい町でした。いつかまた行きたい。
posted at 20:09:50




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サースクの街のどまんなかにある「ワールド・オブ・ジェイムズ・ヘリオット」、ヘリオット先生記念博物館に再現された「1940年代の獣医さん宅のキッチン」。おとといに引き続き、やっぱりクリーム色のアーガ。 http://t.co/Qqh6wp1z
posted at 22:28:47


ジェイムズ・ヘリオットとは、サースクにゆかりの深い作家のペンネーム。北ヨークシャーの田舎町で新米獣医として体験したできごとをつづった半自伝的な作品で(英国では)非常に人気がある。http://t.co/3kkrYZ14
posted at 22:38:44


「ヘリオット先生シリーズ」たいへんおすすめ。ほんとは小さくて可愛い動物の治療に専念したいのに、馬や牛と泥だらけで格闘しなければならないとか、キャラの濃い村人たちに翻弄されたりだとか。ほとんどが短編連作エッセイのような形式で、気軽に読めます。
posted at 22:47:10




おまけ。
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「ワールド・オブ・ジェイムズ・ヘリオット」記念館の外観。ヘリオット先生が実際に獣医として開業し、執筆もしていた場所です。中身は「再現」。
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処置室を再現したもの。ほかにも医療器具の歴史やテレビドラマ撮影ごっこができるスペース(これはこどもむけですね)、往診車なんかもあって、なかなか見ごたえのある施設でした。

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『ヘリオット先生奮戦記 上』
ジェームズ・ヘリオット (著), 大橋 吉之輔 (翻訳)

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2011年11月19日

『英国メイド マーガレットの回想』情報更新

『英国メイド マーガレットの回想』
マーガレット・パウエル著 村上リコ訳
定価1,890円(本体1,800円)
定価1,785円(本体1,700円)※予価変更になりました!
ISBN 978-4-309-20582-3 ● Cコード 0098

 15歳でキッチンメイドとなったマーガレット。雇い主たちの仕打ちに涙し、ある時は楽しみながらコックに出世する。この自伝でベストセラー作家に。カバー絵は「エマ」森薫氏の描き下ろし!

 1920年代の英国。海辺の街の職人の家で健やかに育った15歳のマーガレットは、貧しさから教師になる夢をあきらめ、裕福な家のキッチンメイドになった。そこに待っていたものは、ハードな長時間労働と、根深い階級格差だった。
 大量の鍋を洗い、手間隙かけて料理の下ごしらえをし、活きのよすぎるロブスターと格闘し、女主人の理不尽な仕打ちに耐える日々。失敗を繰り返しながら、彼女は強くなる。昼なお暗い地下のキッチンに押し込められて、一日15時間の家事労働に携わってはいても、胸に秘めた「野望」が消えることはない。
 20世紀初頭の英国における、メイドやコックの隠された生活が、活き活きと綴られる。最下層のキッチンメイドからコックへ、そして六十歳を超えてのち本書を出版し、一躍売れっ子作家の道へ。知性とユーモアと批判精神に満ちた、類まれなる英国女性の一代記。

河出書房新社より12月に発売予定です。
出版社の公式サイトにロングバージョンの内容説明と本文の抜粋を掲載していただいています。
よろしければご覧下さい。

(釣り上げた魚はこの後さらにたいへんなことになります……笑)
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2011年10月27日

『英国メイド マーガレットの回想』2011年12月発売予定

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『英国メイド マーガレットの回想』
マーガレット・パウエル 著 村上 リコ 訳

 鋭意校正中の訳書について、出版社の公式サイトに情報が掲載されました。河出書房新社より、12月後半に発売になります。1920年代に十五歳でキッチンメイドになった、マーガレット・パウエルという女性が、家事使用人としてすごした日々をつづった回想記。その翻訳を手がけました。

 二十世紀初頭の英国で暮らしていたメイドやコックの日常を、活き活きと詳細に描写するノンフィクション。原著は1968年の初版刊行以来、貴重な生の声を伝える社会史史料として、数多くの歴史書に引用されてきました。私自身、『エマ ヴィクトリアンガイド』や『図説 英国メイドの日常』を書くとき、『英國戀物語エマ』などアニメの制作にかかわるとき、まるで亡き著者に相談するかのような気持ちで、幾度となく読み返したものです。

 貴重な史料であると同時に、著者の人柄と皮肉のきいた語り口によって、まず第一に、たいへん魅力的な読み物でもあります。訳しながら、どれだけ吹き出したことか。英国では幅広い読者に愛され、長く読みつがれてきました。この本を紹介することができて光栄です。

 カバーイラストは、森薫さんが描いてくれることになりました。初めは『英国メイドの日常』のように既存の絵画を使おうとしていたのですが、ぴったり来るものが見つからず。ある日、同居人の猫丸さんが「……森さんに頼んでみれば?」「ああっ!(思いつかなかった!)」というわけで、急遽依頼。連載でお忙しいなか、引き受けてくださいました。いくら感謝しても足りません。ありがとうございます。

 あとちなみに邦題について。企画書は原題『階段の下』のまま出してあったんですが、会議の場で社長みずからこのタイトルをつけてくれたそうです(笑)。伝わりやすくていいかなと思っております。
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2011年04月26日

キャビネット・カード〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(6)

 拙著『図説 英国メイドの日常』に掲載するつもりで、用意したけれど使わなかった図版です。本日のこぼれ画像はこちら。

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 午後の黒い制服に白いエプロンとキャップをつけ、ブーツをはいてまっすぐ立っているメイド。着席している黒衣の女性はハウスキーパー、ないしはコックでしょう。ぴったりしてふくらみのない袖山、飾り気のないエプロン、びっしり並んだ小さなボタン。1880年代かと思われます。未掲載理由は、正直言って覚えてません。載せそびれた、というのが正解のような……。

「名刺判写真(カルト・ド・ヴィジット)」かな?……と思いきや、前にご紹介した写真と並べてみるとこんな感じ。

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 これは、カルト・ド・ヴィジットよりも少しおくれて1860年代に登場した「キャビネット・カード」と呼ばれるフォーマットです。規格は4.25×6.5インチ(10.8×16.5センチメートル)。名刺判写真は2.5×4インチ(6.35×10.15センチメートル)ですから、およそ二倍の大きさです。現在のキャビネ判(LL判)とも微妙に違うので、ちょっと保存時の扱いに困ります(笑)。

 この場合のキャビネットは応接間や居間に置かれた飾り棚のことで、棚に飾ってもよく見えるサイズ、という意味。1870年代後半から十九世紀末までの期間にもっとも人気があり、二十世紀初めまで撮られ続けてはいたものの、やがてまた別のフォーマットにとってかわられていきます。

 そのほか、さらにもっと小さいものもありました。

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 右二つ。このちっちゃなサイズなら、財布にしのばせたり、アクセサリーにして身に着けたりもできそうです。小さくて手軽なだけに、「ほら、うちの猫、かわいいでしょ!」と、むりやり人にあげたりしたかも。犬と猫の写真を交換してコレクションしたりもしたかも。実家で飼ってた猫の写真を、肌身離さず勤め先にも持っていったメイドがいたかも。……いや、ぜんぶ妄想ですが。

 かつては画家を呼んで描かせるしかなかった「肖像」が、ヴィクトリア時代には誰でもちょっとした金額で棚に飾ったり人に贈ったりできるようになり、ついには自分でカメラを手に入れて、愛する人や子どもやペットを撮ることも夢ではない時代がやってきます。大きくなったり小さくなったり、華美になったり質素になったり。ひとつのもののフォーマットの変遷を追っていくと、それを手にした人たちの気持ちの移り変わりも伝わってくるようです。……いえ、妄想ですけどね。
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2011年04月20日

コミック・ポストカード3枚〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(5)

「あの詩を読んだら、なんだか涙が出そうになったのよ。これはほんとに私とおんなじだって。60年前に家を出て、東京に来たときのことを思い出してね」――『図説 英国メイドの日常』第2章冒頭部分の詩を読んで、年上の友人Kさんがそんな言葉をくれました。彼女は中学を卒業すると同時に東北から上京して、住み込みで2人の子どもの面倒を見る子守になり、そのあとは料理店の調理場やお給仕で、現在にいたるまで働いてきた人です。120年前の英国ヴィクトリア時代の女の子たちと、60年前の日本の女の子、気持ちはつながっているのですね。

『図説 英国メイドの日常』の未掲載図版をまた少しご紹介します。今日の図版は、およそ百年くらい前に使用されたコミック・ポストカードから。

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「下宿屋の召し使いがブーツを持ってくる」1907年消印

未掲載理由:ほとんど同じテーマで描かれた、よりクオリティの高いものに差し替えました。

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 反対側はこんな感じ。半ペニー切手のうえに、07の消印が見えます。

 手元にあるカードのうち、消印があるものを確認すると、1906年〜1908年あたりがいちばん多いようです。エドワード七世時代(治世1901年〜1910年)は、「絵葉書の黄金時代」の中心的年代だそうですが、これは、メイドがまだ若い女性の職業の中で最大集団を保っていた時期にも重なります。

 つまり当時の英国で、メイドは日常的に出会う若い女の子であったわけで、それでよく題材になったのでしょう。ちゃっかりしたメイドの生態を雇い主目線で批判するものも多いのですが、そんな絵の裏の通信文を見ると「エプロン送ってくれてありがとう」なんて書いてあったりもするので、ひょっとしたら彼女たち自身がこうしたカードを日常使いしていたのかな、と思います。

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「グランドスラム」(1907年消印)

 これは未掲載というわけではなく、本にも載せた絵ですが、諸事情でモノクロ印刷になったので、せっかくですからここでカラーでご紹介。

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「メアリーがパパのお気に入りの胸像を破壊」(1907年消印)

 これも。テン目が可愛くて、大好きな一枚です。ぞんざいメアリーの制服はピンクなんですね。今回掲載した3枚を描いたトム・ブラウンの画風は今見ても洒落ていて、百年以上古いものとは思えません。

 発売前後の一週間はできるだけ更新するぞ! とひそかに心に決めていろいろ書いてきましたが、ここから先はもう少しゆるゆる運転でいこうと思います。ただ、もともとのペースはゆるすぎたので、それよりは少し活発に。今後ともよろしくお願いいたします。

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林 丈二『西洋アンティーク絵葉書―夢みる少女たち』東京堂出版

 愛らしい少女たちを描いた、たいへん美しい多色刷りポストカードコレクション。眺めて楽しく、解説も詳しいです。コミックや写真もいいけど、こういうロマンチックなイラストのカードもすてき。

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A History of Postcards: A Pictorial Record from the Turn of the Century to the Present Day
Martin Willoughby

 ポストカードの歴史についてはまだまだ勉強中で、いろんな資料を探して読んでみているところです。大判ハードカバーで扱いにくいのが難ですが、これは通史でわかりやすかったです。

1878年の「ハイ・ティー」〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(1)
名刺判写真(カルト・ド・ヴィジット)〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(2)
名刺判写真をもう2枚〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(3)
政治家=公僕=執事?〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(4)
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2011年04月18日

ジョージ・ダンロップ・レスリー〜『図説 英国メイドの日常』装画について

 今日は『図説 英国メイドの日常』のカバーについてもう少しお話しさせてください。

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 ほっぺたやひじのピンク、髪のブラウンとぴったりマッチした、とても愛らしい装丁にしていただきました。最初にデザインの仮組が送られてきたときには、あまりの可愛さにテンションあがって文字通り小躍りしたほどです(笑)。帯のチョコレート色、タイトルの書体まで好みのど真ん中。デザイナーさんに深い感謝を捧げたいと思います。

 装画はヴィクトリア時代の画家ジョージ・ダンロップ・レスリー(1835〜1921)の「アップル・ダンプリング」。画題はりんごの伝統菓子の名前です。いかにもメイドらしい制服姿ではないのですが、おそらく画家が自分の時代よりも少し古風な服装をあえて選んで描いたのでしょう、ノスタルジックな甘い雰囲気に包まれています。

 レスリーは女性や子どもたちの、理想化された日常風景を多く描いた人でした。ガーデンの描写に定評があるようです。

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「ひまわりとゆうがお」

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「幼い庭師」

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「アリス・イン・ワンダーランド」

 芸術史的な評価はそれほど高くないのでしょうけれど、繊細でふっくらとしていかにもヴィクトリア時代の風俗画らしく、好きな画風です。なお、同じころの美人画ではジェームズ・ティソが有名ですが、お互いに活発だった1870年代には近くに住んでいて交流もあったとか。絵柄や色の塗り方が似ている気がしますが、ティソは細面、レスリーは丸顔好みだったんでしょうね(笑)。

※画像の引用元はこちらこちら

 レスリーの「彼女の最初の職場」という絵は、家事使用人に関する基礎文献のひとつ『ヴィクトリアン・サーヴァント(The Rise and Fall of the Victorian Servant)』の原著の装画に使われています。

 次回はまた写真か、ポストカードか、写真ポストカードか(笑)、何かしら図版についてご紹介したいと思います。

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Pamela Horn『The Rise and Fall of the Victorian Servant』


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パメラ ホーン 子安 雅博訳『ヴィクトリアン・サーヴァント―階下の世界』英宝社



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2011年04月17日

『図説 英国レディの世界』(献辞にかえて)

 なにごともなかったかのように更新再開。予定は未定です。

 拙著『図説 英国メイドの日常』が、そろそろ一部の書店に届いているようです。実家の父からはオンライン書店から届いたよと報告の電話があり、「これ中身が詰まりすぎだからサイズを大きくして二倍の値段で売ればいい」などと無茶な提案をされました(笑)。昨日の土曜日、外出したついでに新宿の書店をのぞいてみましたら、紀伊国屋書店とルミネのブックファーストには入っていました。歴史書のコーナーで『図説 英国レディの世界』と並べて平積みにしていただいているのを見たときには、なんだかもう胸が一杯になってしまいましたよ……。今回の私の本が出ることになったのは、『英国レディ』著者のお二方のおかげです。

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岩田 託子 川端 有子『図説 英国レディの世界 (ふくろうの本/世界の文化)』河出書房新社

 2004年にハードカバーで出た『英国レディになる方法』が、好評につき数年で売り切れとなり、ソフトカバーの新装版でタイトルをかえて「図説シリーズ」に入ることになったとき、それと同時に新しい「ヴィクトリアン女子文化の本」も出したい、というのが担当編集者の意向でした。そこで川端先生が書き手として私を推してくださったのでした。

 編集さんの案で、この二冊のカバーには、対になる英文のフレーズが添えられています。

 『英国レディの世界』には、
 The World Upstairs in the Victorian Household
 ――The Making of the British Lady
(ヴィクトリア時代の家庭における階上の世界
 ――英国レディのつくりかた)

 『英国メイドの日常』には、
 The World Downstairs at the Turn of the Century
 ――The Daily Life of the British Maidservant
(世紀転換期における階下の世界
 ――英国メイドの日常生活)

『図説 英国レディの世界』は、19世紀ヴィクトリア時代における中流階級の女性の生活をいろどったもの、こと、風習などを、同時代の児童文学や小説を題材に解説した本。わかりやすく歯切れよく、細やかに、愛とユーモアをちりばめて書き上げられた名著です。

 当時の中流レディがレディであるには、たてまえ上、彼女は労働をしない存在であることが求められました。そのためには、どんなに懐がきびしくても、ほかの何を犠牲にしても、少なくともひとりはメイドを使っているという体裁が必要だったのです。たてまえがどれほどたてまえにすぎず、現実の生活がどんなふうであったのかは、『英国レディの世界』と『英国メイドの日常』を併読すれば、まさに表裏一体として受け止めていただけるはずです。

 もしハードカバーのほうの『英国レディになる方法』をお持ちでない方は、この機会にぜひお求め下さい。
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2011年04月15日

政治家=公僕=執事?〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(4)

 そろそろ書店に並ぶかもしれない『図説 英国メイドの日常』の未掲載図版です。詳しい説明はこちらをどうぞ。本日の図版は執事です。メイドじゃないけどおつきあいください。

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 1841年に創刊された諷刺漫画誌『パンチ』から。中流階級の読者を中心に、非常に広く読まれていました。「リトル・ミス・バジェット」1887年。

 最初の料理が出たあとすぐ、デザートをほしがるバジェットお嬢さんに「いけませんお嬢様、次のコースがあるのですから」とすげなくお断りする執事。しきたりにのっとって長々と続く晩餐会を、滞りなく進むよう監督するのは執事の仕事でした。燕尾服に白いシャツ、白いタイをつけ、リボンつきのエナメルパンプスをはいています。ガチガチの正装ですね。

 タイトルの「バジェット」とは予算のことで、マザー・グースの歌のひとつである「リトル・ミス・マフェット」をもじっています。執事に扮しているのは当時の大蔵大臣(第一大蔵卿)ウィリアム・ヘンリー・スミス(1825−1891)。「WHSmith」といえば、英国では駅構内から空港までいたるところに今もあるキオスクの名前ですが、この店を国民的チェーンストアに押し上げた人物です。

 貴族ばかりで構成された政治の世界で、ビジネス界出身の大臣は目立ったようです。みずからは庶民ながら上流のマナーを知り尽くし、そして他人に奉仕するという執事の役柄が似合っていますね。慇懃で気位が高そうな感じもぴったり。と思いきや……。

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 2年後の1889年にはこの有様(笑)。「辞職願いを出さねば!」

 上の2枚とも、描いたのは『不思議の国のアリス』の挿絵で知られるジョン・テニエルです。バジェットお嬢さんにちょっとアリスの片鱗がありますね。ちなみにテニエルは、1871年には当時の首相グラッドストーンにも執事の格好をさせています。

未掲載理由1:と、このように、1枚の絵に含まれた情報が多すぎて……。
未掲載理由2:しかもメイドではなく執事だったから。

 次回は『図説 英国メイドの日常』のカバーなどについて書きたいと思います。予定は未定です……。

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松村 昌家『『パンチ』素描集―19世紀のロンドン 』岩波書店

 テムズ河の汚染、鉄道ブーム、お針子の悲劇、子どもの情景、スカートをふくらますクリノリン。ヴィクトリア時代の社会を映し出す『パンチ』のイラストたち。

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谷田 博幸『図説 ヴィクトリア朝百貨事典 (ふくろうの本) 』河出書房新社

 鉄道網の発達、そして貸本とともに発展していったW. H. スミスの歴史が載っています。

1878年の「ハイ・ティー」〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(1)
名刺判写真(カルト・ド・ヴィジット)〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(2)
名刺判写真をもう2枚〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(3)


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2011年04月14日

名刺判写真をもう2枚〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(3)

 まさかの連続更新ですよ。いけるところまでがんばってみます。

 もうすぐ発売になる『図説 英国メイドの日常』に掲載しなかったこぼれ図版です。詳しい説明はこちらをどうぞ。昨日ご紹介した「名刺判写真(カルト・ド・ヴィジット)」の続きです。

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 中規模の家で撮影されたスタッフの集合写真です。椅子に座っている濃い色の服の女性がハウスキーパー、そのとなりの男性は料理人でしょうか。薄い色の制服を着たメイドたちと、男性スタッフもいます。キャップの形や服のシルエットからみるに、1860年代かと思います。昨日の写真は(下のも)台紙の四隅が丸くしてありましたが、これは切ったままでとがっています。紙質は薄く、裏はまっしろ、写真館のロゴもはいっていません。そのことからも、名刺判写真としては初期の年代に撮られたものであることがわかります。

 未掲載理由:色あせが気になるため。もうすこし見やすい別の集合写真に、校正のとき差し替えました。

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 もうひとつ。右の子は男装で、左の子はメイドの制服を着ています。背の高いメイドキャップに、ぴったりした袖。おそらく1880年代。

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 裏はこんな感じ。ロンドンのクラパム・コモンの写真館で撮られたもの。鉛筆で値段が書きこまれているのには目をつぶってください(笑)。

 未掲載理由:ふたりとも、当時「紳士淑女につきもの」といわれた手袋はしておらず素手です。制服姿の子のほうの左の薬指には指輪が見えます。メイド仲間でふざけて撮りにいったのかもしれないし、ほんとうの制服ではなく仮装舞踏会や演劇の衣装かもしれないし、ひょっとしたらレスビアンカップルなのかも。妄想はふくらみますが、解決の糸口がないため。

 なんだかもやもやした写真とすっきりしない記事になってしまいましたが、本のほうにはもっとくっきりした写真やはっきりした文章が載っています。興味を持ってくださった方は、ぜひ『図説 英国メイドの日常』をお読みいただけると幸いです。

 写真が続いたので、次はイラスト系をご紹介したいです。

1878年の「ハイ・ティー」〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(1)
名刺判写真(カルト・ド・ヴィジット)〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(2)


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2011年04月13日

名刺判写真(カルト・ド・ヴィジット)〜『図説 英国メイドの日常』未掲載図版(2)

 もうすぐ発売になる『図説 英国メイドの日常』のために用意したけれど未掲載となった図版をご紹介します(ひとつ前の記事に詳しい説明があります)。なにか問題があって編集さんからNGがでたというようなことではなく、ぜんぶ自分で選んで自主ボツにしたものです。

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「名刺判写真(カルト・ド・ヴィジット)」と呼ばれる写真。おそらく1890年代中期〜後期。

 名刺判写真とは、1854年にフランスで発表されたカード型の写真です。2.5×4インチ(6.35×10.15センチメートル)の厚紙の台紙にプリントを貼ったもので、安価で複数のコピーが手に入るため、王室から一般庶民にいたるまで一大ブームになりました。ほんとうに大量の写真がとられたので、英国の地方都市のアンティークショップやマーケットに行くと、名前もわからない老若男女の写真が安い値段でたくさん売られています。

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 台紙の裏には、こんな感じで写真館の名前が美しくデザインされていることが多いです。これはロンドンのリージェント・ストリートにあった写真館で、支店もたくさん書かれているところをみるにかなり繁盛していたようですね。庶民にも手が届く値段になっていたとはいえ、せっかく「写真館に写真をとりにいく」のだから、できるかぎり立派な自分で写りたいというのは自然な感情です。おしゃれして小首をかしげてポーズをとる若い女性の名刺判写真のなかには、きっと普段はメイドの制服を着て働いていた人もいたのでしょう。というわけで、メイドの制服姿の名刺判写真は、正装、ドレスや喪服などにくらべて、残っている数は少ないようです。

未掲載理由:「メイド」という説明書きをみて入手したはいいけれど、ひょっとしてこれ、病院ナースでは……? 帽子は当時のナースがかぶっていたものと同じ形状、ベルトも彼女たちがつけていたタイプとよく似ています。そんな感じで、判断に迷ったため。

 ではまた次の図版で。

<本記事参考>
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谷田 博幸『図説 ヴィクトリア朝百貨事典 (ふくろうの本) 』河出書房新社

 アイロンからローラースケートまで、19世紀の人びとが親しんだモノたちを解説する本。

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Jayne Shrimpton『Family Photographs & How To Date Them』

 写真の形式と、服のディテールや髪型などから「いつ撮ったかわからなくなった家族の写真の年代を特定する」ための本。日常的なファッション史・写真史の資料としてもおすすめです。
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