2017年01月24日

『図説 英国社交界ガイド』紹介とあとがき公開



『図説 英国社交界ガイド エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活』
村上 リコ 著
単行本 A5変形 ● 128ページ
ISBN:978-4-309-76249-4 ● Cコード:0339
発売日:2017.01.26

 19世紀の英国において、力を増した中流階級に属する女性たちは、貴族や地主の生活スタイルをまねることで、少しでも上の「社交界」に近づこうとしていた。当時、数多く出版されていた「エチケット・ブック」の記述を手がかりに、ヴィクトリア時代の中流女性が送った社交生活を再現し、彼女たちの心情に迫る。

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 2017年1月26日ごろ発売になります。河出書房新社「ふくろうの本」シリーズで4冊目の新しい書きおろし本です。読んでくださるみなさま、いつもありがとうございます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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 詳しい目次です。クリックで拡大すると読めます。

 社交とは、人付き合いのこと。社交界とは、身分の高い人びとが交際する小さな社会。19世紀から20世紀初頭の英国で、「社交界に入りたい」人、「その世界で名誉ある地位を占めたい」人が、「武器」として、あるいは「パスポート」として、身につけておかなければいけなかったものはなんだったのか。エチケットを覚え、服装を整え、紹介を受けて訪問し合い、本格的なパーティーに招き招かれ、もてなしもてなされ、互いを品定めし、地位上昇を狙う……。そんな彼女たちの日常と野望を、当時の「エチケット・ブック」の記述から考察しています。もし自分だったらどうするだろう……と、身近に感じてもらいたくて、書き方を工夫してみました。

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 いつものように、当時のようすがわかるような風俗画、風刺漫画、ファッション画などもいろいろと収録しています。

 この本で何をしようとしたか、書いてみてどうだったか、以下に「あとがき」を公開しますので、読んでいただけると幸いです。


 あとがき

「エチケット」が苦手です。
「空気を読む」のもとても下手です。
 そんなわたしですが、たまに英国ヴィクトリア時代を舞台とした作品の制作に参加して、当時のマナー、エチケット、人どうしの距離感やふるまい方の「法則」を調べる仕事をすることがあります。そうしてわかった情報を、一冊の本にまとめておけば、いずれリファレンスブックのように使えるかも――と、そんなもくろみ(取らぬ狸の皮算用)のもと、この本の企画を立てました。
『社交界ガイド』というタイトルは編集部でつけていただいたものです。この題から、華麗なる上流社会のすべてがわかる、貴族とつながりがあったりする「ハイソサエティな」人が書いた本……を想像してお求めになった方がいたとしたら、ご期待を裏切って申し訳ありません。わたし自身は王侯貴族や社交界などまるで縁がなく、むしろ現実世界では、階級社会に疑問を抱いているほうです。
 エチケットは苦手です。
 どうしてそんなに苦手なのか、この本と向き合って、少しわかった気がします。人付き合いに暗黙のルールがあること。その、ひとつひとつのルールを決めているのは誰なのか、よくわからないこと。ルールがひとり歩きして様式化していくこと。客観的に見ることができれば面白い現象ですが、なんというかこう、社会のルールを理解できず、「空気を読めず」、きまりの悪い思いをした過去のあれこれがよみがえり、執筆にはいつも以上に時間がかかってしまいました。関係各位にはご迷惑をおかけしました。
 マナーは大切だよ、思いやりだよ。人生を豊かにするよ、という考えの方にも、わたしのようにエチケット全般が苦手な人にも、この本が、何かを考えるきっかけになってくれれば幸いです。

二〇一六年一二月 村上リコ




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2017年01月10日

2017年のご挨拶と新刊『図説 英国社交界ガイド』のお知らせ

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『パンチ』1867年8月31日、ジョージ・デュ・モーリエ「ティットウィロー夫妻、おいとまごいをいたします」より。(文字無しの図版と解説は新刊本に収録予定)

 旧年中はお世話になりました。本年もよろしくお付き合いのほどをお願いいたします。
 
 2016年は、前年の『図説イングランドのお屋敷』に続き、トレヴァー・ヨーク著『図説英国のインテリア史』の翻訳書を出すことができました。マール社より好評発売中です。また、12月に宮城学院女子大学に招いていただいておこなった講演も印象に残っています。学生さんたちの言葉に触発されて、わたしも自分の考えを素直に表現していかなければいけないという思いを新たにしました。ありがとうございました。
 
 太田詩織著『オークブリッジ邸の笑わない貴婦人』シリーズの監修をさせていただきました。19世紀の生活を北海道で真剣に再現するという内容の連作短編小説です。

 枢やな著『黒執事』では引きつづき漫画連載のアドバイザーをつとめています。また、今月公開になる劇場版『黒執事 ブック・オブ・アトランティック』ではひさびさにアニメ制作の考証協力もしました。

 国書刊行会より、「シャーロック・ホームズの姉妹たち」と題して、19世紀末と20世紀初頭にイギリスとアメリカで発売されたレアな女性探偵小説の邦訳が発売されました。ファーガス・ヒューム著『質屋探偵ヘイガー・スタンリーの事件簿』レジナルド・カウフマン著『駆け出し探偵フランシス・ベアードの冒険』(いずれも平山雄一訳)の二冊に、僭越ながら解説を寄せています。「当時の生活や女性に関することならなんでも自由に」とのご依頼だったので、本当に自由に書かせていただいてしまいました。お読みいただけますと幸いです。

 そして昨年後半はオリジナルの著書に取り組んでいたのですが、思いのほか苦労して時間がかかってしまい、現在にいたります。ようやく今月末、河出書房新社ふくろうの本より『図説 英国社交界ガイド エチケット・ブックに見る19世紀英国レディの生活』として発売になる予定です。「エチケット・ブック」の記述を通して19世紀英国ミドルクラス女性の社交生活を想像する本です。詳しい内容については、追々紹介していきますね。

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 書影はまだですが、書店での予約は始まっています。なにとぞよろしくお願い申し上げます。
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2016年05月19日

トレヴァー・ヨーク著『図説 英国のインテリア史』発売中


図説 英国のインテリア史
著:トレヴァー・ヨーク
訳:村上リコ
ISBNコード:978-4-8373-0907-9 C3071
A5判/80ページ
定価:本体1580円(税別)

<目次>
【第1章】
チューダー様式とジャコビアン様式
Tudor and Jacobean Styles 1500-1660年
【第2章】
王政復古様式とアン女王様式
Restoration and Queen Anne Styles 1660-1720年
【第3章】
初期ジョージ王朝様式
Early Georgian Styles 1720-1760年
【第4章】
中期ジョージ王朝様式
Mid Georgian Styles 1760-1800年
【第5章】
摂政様式
Regency Styles 1800-1840年
【第6章】
初期ヴィクトリア様式
Early Victorian Styles 1840-1880年
【第7章】
後期ヴィクトリア様式およびエドワード七世様式
Late Victorian and Edwardian Styles 1880-1920年
【第8章】
戦間期および戦後の様式
Inter and Post War Styles 1920-1960年

【巻末付録】
・年表
・用語集
・索引

 
 翻訳した本が無事に刊行され好評発売中です。

 前回の『イングランドのお屋敷』と同じ著者、同じシリーズのインテリア史編。部屋の構造から、壁のパーツ、窓や天井、机や椅子や特殊な家具などの時代による変遷を、ヨークさん自身によるイラストで追っています。ページがちょっと少なく値段が据え置きになってしまい申し訳ありませんが、内容は引きつづき濃いと思います。

 このシリーズのイラストには、手描きの文字が書き込まれていることが多いのですが、英単語はなるべく残して、レイアウトの許すかぎりひとつずつに和訳を入れるようになるべくしています。小さな本ですが、「あのアレってなんていうんだっけ」というときに使える一冊にしたいと思ってがんばりました。サンプルページの画像は出版社公式やネット書店のサイトでご確認ください。クリックして拡大するとなんとか文字まで読めるようになっています。

 どうぞよろしくお願いいたします。

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2015年11月05日

トレヴァー・ヨーク著『図説イングランドのお屋敷』発売中

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タイトル:図説イングランドのお屋敷 〜カントリー・ハウス〜
著:トレヴァー・ヨーク Trevor Yorke
訳:村上リコ
体裁:A5判/並製/128ページ/オールカラー
ISBNコード:ISBN978-4-8373-0905-5 C3071
定価:本体1580円(税別)

 新しい翻訳書が10月下旬に刊行になり、おかげさまで好評発売中です。
 
 イングランドのカントリー・ハウスの歴史、様式、ディテールについて、中世後期から第一次世界大戦後あたりまでを網羅して解説した本です。

 著者のトレヴァー・ヨークさんは、若いころから歴史的建造物めぐりが大好きで、あちこちをめぐり歩いたといいます。そんな著者自身による写真と、温かみのある手描きのイラストが添えられ、非常にわかりやすい内容になっています。建物だけではなく、歴史と世相による住人の暮らしぶりの変化や、インテリアのディテールや、家事使用人が仕事をしていたキッチンなどの部屋の構造も、かなり詳しく図解してあります。興味のある方にはたいへんおすすめです。出版社の公式サイトamazonの画像見本でページのサンプルを確認できますので、よろしければご利用ください。

 発売前後の時期に、英国政府観光庁のブログとツイッターでプレゼントキャンペーンをしていただきました(告知が遅くなってしまい、また募集期間も短めだったので、すでに締め切られています。すみません)。

 このキャンペーンにともない、「カントリー・ハウス訪問のすすめ」というエッセイを寄稿しました。

 http://ameblo.jp/britain-park/entry-12085266006.html
 
 結論としてはこの本の紹介ですが、単独でも楽しめるように力を入れて書いてます。本には載っていない、村上の撮ってきた写真も紹介していますので、よろしければリンク先で見ていただけると幸いです。
 
 ヨーク氏の著書は、英国では30種類以上も刊行されており、この本が好評であれば、順次ほかの本も続けて出していけると思います。別の訳者の方により『イングランドの教会堂』が今月出る予定で、わたしのほうでももう1冊翻訳するというところまでは決まっています。

 どうぞよろしくお願いします。



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2015年10月26日

朝日カルチャー新宿教室「ダウントン・アビー」講座(2015/10/24)&ヴィクトリアンイベント(10/16)来場御礼

 2015年10月24日に朝日カルチャーセンター新宿教室にて「『ダウントン・アビー』鑑賞のための時代背景入門」という講座をしました。





 今回は発売元のNBC ユニバーサル・エンターテイメントにも許可を得て、ドラマ『ダウントン・アビー』の画像や映像を参照しながらお話をすすめました。まず、当時の3つの階級とそれぞれのグループに代表される考え方(とみなされているもの)、キャラクターがどの階級に属するのか、それによってどのような性格付けがされているのか、どんなところにそれが表われているのか……というようなところを考察し、次に複雑な貴族の称号と呼称について、ドラマの内容に絡めて解説しました。さらに、爵位と財産の相続、長子相続と限嗣相続と厳格継承財産設定と女相続人と……などなど、ねっとりやっていたらあっというまに時間切れが近づき、最後の家事使用人のあれこれについてはちょっと駆け足になってしまって失礼しました。ですが、どうしてもお伝えしたかったところについてはなんとかできたんじゃないかと……。

 いろいろといたらないところもあったかと思いますが、何かしら得るものがあったならさいわいです。ご来場いただいたみなさまには深くお礼を申し上げます。

※※※

 また、その1週間ほど前の10月16日には、東銀座のArt Gallery M84にて、石井理恵子さんと共著で9月に出版した『ヴィクトリア時代の衣装と暮らし』関連のイベントにも参加しました。同書のなかで、ファッション史や階級別服装の解説挿絵を描きおろしてくださった松本里美さんの、銅版画の個展『CURTAINカーテン/inside & outside stories』会場でおこないました。トム宮川コールトンさんによる取材写真のスライドショーを見ながら、松本&石井&村上でトーク。

 当日の様子は以下でどうぞ。

松本里美さんのブログ
 http://eggdays.exblog.jp/25003384/

石井理恵子さんのブログ
 http://britcat.blog.so-net.ne.jp/2015-10-18
 
 おしゃべりは得意でなくて、なんだか申し訳ないほどあわあわした感じになっていたような気がしますが(わたしはね)、それは置いといて、写真と銅版画と、お茶とお菓子とワインですてきなひとときになったんではないでしょうか。こちらもご参加くださったみなさま、ほんとうにどうもありがとうございました!



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2015年09月11日

『ヴィクトリア時代の衣装と暮らし』発売中

 新しい本ができました。『英国男子制服コレクション』『パブねこ』のライター石井理恵子さんとの共著です。

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ISBNコード:978-4-7753-1344-2
Cコード:0077
シリーズ名:制服・衣装ブックス
書名:ヴィクトリア時代の衣装と暮らし
発行年月日:2015年9月10日
判型:A5判
ページ数:160ページ
著者名:石井理恵子/村上リコ
価格:本体2,000円(税別)
新紀元社コード:趣味・実用

出版社より:

 英国には、かつて実際に使われていた建物を移築して、昔の暮らしを再現しているミュージアムがいくつもあります。ヴィクトリア時代をテーマにした場所では、当時の服装に身を包んだガイドさんたちが迎えてくれます。
 また、チャールズ・ディケンズのファンが集まるフェスティバルでは、ヴィクトリア時代の仮装をした参加者たちと出会えます。

 そんな、ヴィクトリアン・ファッションを身にまとった人たちの写真をオールカラーで掲載しています。図版やイラストとは違った、リアルな装いを知る事ができる貴重な一冊です。


 石井さんとカメラマンさん、協力者の方々が、英国各地をまわって、ヴィクトリア時代の生活を再現したオープンエア・ミュージアムやフェスティバルを取材し、集めてきた衣装の写真が主役です。わたしは歴史コラムや年表、ディケンズフェスティバルの章の構成と文章を担当しました。

 着て動き回り、デモンストレーションをおこなうための装いであるせいか、ひとつひとつの衣装や着こなしは、あまり厳密に作られたものというわけではなかったりもするのですが(たとえばロングスカートの下は安全ブーツだったり)、たくさんの写真を見ると、やはり色のついた実物の衣装のイメージ喚起力というのは強力だな〜と感じます。英国の皆さんが考えるヴィクトリアンなファッションってこんな感じ、というのがとてもよくわかります。

「制服・衣装ブックス」としては背景・脇役ではありますが、さりげなく映り込む建物や道具などがまた、たいへん良いです。こちらは基本的に本物か、またはそれに近いレプリカが多いです。本書に登場するオープンエア・ミュージアムには、わたしも過去に訪れていますが、石造りのコテージや、黒光りする鋳鉄のレンジや、大きなお屋敷のキッチンや洗濯室の様子など、生活の匂いの残る空間は、好きなひとにはたまらないものです(わたしとかね)。好きなひとにとってはえりすぐりのお薦めスポットですので、ぜひ実際に訪れてみてほしいなと思います。

 おまけ。わたしの撮ってきたこぼれ画像。本には載っていません。

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 ブリスツヒル・ヴィクトリアン・タウンの学校。2007年。

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 ビーミッシュのメイドの部屋。2012年。

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 シャグバラの使用人ホールの御者のコート。2006年。

 どうぞよろしくお願いします。

■目次
ヴィクトリア時代の社会と服装

第1章 街と村の人々の衣装
ブリスツ・ヒル・ヴィクトリアン・タウン
ビーミッシュ

第2章 お屋敷の使用人たちの衣装
シャグバラ

第3章 ディケンズの時代の人々の衣装
ロチェスター・ディケンズ・フェスティバル

[コラム]
田園地帯のコテージ暮らし
敷地内の移動には実際に使われていた乗り物で
ビーミッシュを支える衣装部の仕事
シャグバラの歴史と代々の所有者たち
カントリー・ハウスと使用人
「ヴィクトリアン・ファッション」の変遷
ヴィクトリアン・ファッションを楽しむための映像作品
ディケンズの作品とその時代
チャールズ・ディケンズの代表的な作品
ヴィクトリアン・ドレスとエチケット
ミュージアム紹介
アクセスデータ
旅のヒント





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2015年01月19日

シャーン・エヴァンズ『フォト・ストーリー 英国の幽霊伝説』2015年1月刊行



『フォト・ストーリー 英国の幽霊伝説  ナショナル・トラストの建物と怪奇現象』
シャーン・エヴァンズ/村上リコ日本版監修/田口未和訳
ISBN978-4-562-05125-0
A5判・286頁 定価3780円(本体価格3500円)
2015/1/26刊

 歴史的な建築物の保護を行う英国のナショナル・トラストが管理する建物に住む人たちやスタッフへの取材により、彼らが実際に体験した不可解な現象や古い屋敷や土地にまつわる伝説や神話を集め、幻想的な写真とともに紹介する。


 1月26日に発売になります。1月21日取次搬入、22、3日あたりから書店にならぶとのこと。

 村上は日本版監修を手がけました。翻訳は田口未和さんが担当しています。著者は『図説 メイドと執事の文化誌(Life Below Stairs)』と同じシャーン・エヴァンズ。

 サブタイトルの「ナショナル・トラスト」とは、英国の歴史的建造物や自然の景観を保護する団体のこと。1895年に設立され、100年以上も活動をつづけています。貴族の城、大邸宅、マナーハウスはもちろん、海岸線や手つかずの湿原、有名人の生家や旧宅、古代の遺跡、工場などの近代化遺産、灯台や郵便局まで、ナショナル・トラストが保護・補修・公開している資産(プロパティ)は多岐にわたります。
 
 保護にあたいする由緒ある場所が多いわけですから、悲劇の言い伝えや「いわく」には事欠きません。本書は、ナショナル・トラスト保護資産で働く管理者やボランティア、訪問者から直接きいた体験談のほか、その地に伝わる伝説・怪異談などを収集し、紹介するものです。アン・ブーリンからチャーチル、ジョージ・スティーヴンソンやアラビアのロレンスまで、歴史上の有名人にまつわる話もあれば、ローマ時代の兵士やケルトの戦士を見たというような目撃談、神話・民話に近いようなお話、ちょっとした不思議な体験もあり、取り上げられている内容はさまざまです。

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 目次。取り上げられているのはぜんぶで72箇所、日本版には地図もつきます。

 わたしが原書を読んだとき、ぜひ日本版を出して皆さんにもお伝えしたいと思ったポイントは、ナショナル・トラストならではの部分――お屋敷を保護・調査・公開する人びとが、日々の業務の中で体験した小さな出来事の数々です。正体はわからないけれど存在するらしい、姿の見えない住人を「ジョーンズ氏」「メイベル」「奥方様」などと呼んで共存し、日常に起こった不思議な現象を「うまく説明できない」と語る彼女ら彼らは、どことなく誇らしげ。幽霊や妖精や不思議なものを愛好するお国柄、古いものを大事にし、語り伝える性質と、ナショナル・トラストの保護資産はぴったりの取り合わせです。

 綺麗なオチのつく「物語」や、身の毛もよだつ「恐怖体験」をお求めの方には、ひょっとしたらジャンルが違うかも……と思いますが、またちがった楽しみをご提供できるかと思います。うん。
 
 巻末には、英国のとあるお屋敷でわたしの体験した――というか、いつも旅行に同行してくれる猫丸さんから聞いた――話を、日本バージョンの「幽霊伝説」として寄せました。おまけとしてお楽しみいただけると幸いです。

 以下は、担当の方があげてくださった本文サンプル。写真についての解説もあります。













 ちょっといいお値段ではありますが、美しい仕上がりで、手元にあると嬉しい本です。どうぞよろしくお願いします。



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2015年01月11日

年始のご挨拶と2015年の近況

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 ご挨拶が遅れました。あけましておめでとうございます。

 2014年は翻訳書 A・Mニコル『怪物執事』と著書『図説 英国貴族の令嬢』を出しました。
 ことしは共著1冊、翻訳2冊、監修1冊(下記)の予定が決まっています。スケジュールはありがたいことにまずまず埋まっていますが、単発の書き物や監修に関しては状況によりお引き受けできますのでご用のむきはお問い合わせください。


「ミステリマガジン」2015年2月号「ダウントン・アビー」特集号
“「ダウントン・アビー」と階級の箱庭”という解説文を寄せました。ドラマのなかに見られる三つの社会階級の特徴や、貴族の称号と呼称、使用人の上下関係などについて解説しています。番組を見やすくする基本的な情報をまとめたつもりではありますが、できれば最後の項まで読んでいただければ嬉しいです。


シャーン・エヴァンズ著 田口未和訳 日本版監修村上リコ
『フォト・ストーリー 英国の幽霊伝説』原書房
 もうじき、2015年1月に発売予定です。サブタイトルは「ナショナル・トラストの建物と怪奇現象」。歴史的建築物、古い屋敷、有名人の旧宅や自然保護区に伝わる幽霊談や伝説・神話を集めた本です。2色刷りの幻想的な風景やインテリアの写真を添えてあり、装丁も美しい本になりそうで楽しみです。わたしは固有名詞や専門用語を中心に訳文の監修をおこない、巻末に解説文を寄せました。『図説 メイドと執事の文化誌』のシャーン・エヴァンズ著。

 本年もよろしくお願いいたします。
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2014年10月10日

『図説 英国貴族の令嬢』発売中

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図説 英国貴族の令嬢 (ふくろうの本)
村上 リコ

 長らく取り組んでいた本が、無事に完成して発売になりました。19世紀後半から20世紀初頭の英国における貴族と上流階級の家に生まれた女性たちの日常について書きました。『図説 英国メイドの日常』『図説 英国執事』に続く、三部作の完結編……のような位置付けです。

目次:
序章 彼女たちの人生
第1章 英国貴族と継承制度
第2章 令嬢の少女時代
第3章 令嬢の社交界デビュー
第4章 令嬢の「ロマンス」
第5章 令嬢の結婚
第6章 貴族夫人のつとめ


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詳しい目次

●出版社公式サイトの紹介ページ●にて、抜粋を少し読むことができます。よろしければどうぞ。

 これまでの「図説」シリーズや、『エドワーディアンズ』『英国メイド マーガレットの回想』を楽しく読んでくださった方にはもちろん、この春からNHKでも放送が始まったドラマ「ダウントン・アビー」のファンの方にもぜひ読んでいただきたいと思います。企画や構成を考えていたときには、まさか地上波放送に降りてくるとは予想もしていなかったのですが、たまたまタイミングと内容が合って、知らず知らずのうちに解説書(としても読める本)を書いていたみたいな成り行きに。いえ、仕上げの段階でちょっと意識して寄せた部分はありますが。ドラマにはまっている担当編集さんとのおしゃべりの結果、「うーん、やっぱり狩猟のことは書いたほうがいいですよね!」とコラムをひとつ追加したとか(笑)、そのような感じです。

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 どうぞよろしくお願いいたします。

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2014年06月25日

来場御礼と『ダウントン・アビー』鑑賞のための時代背景入門ブックガイド



 去る6月21日、朝日カルチャーセンター新宿教室にて、「時代もの映画に見る英国男子像」という講座をしました。いらしてくださったみなさま、ありがとうございます。また、感想を書いてくださったり、おもしろかったよと言ってくださったかたもありがとうございます。書き物と翻訳が本業ですが、またひと前でお話をする機会をいただくこともあるかと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします。直近ですと、9月には神奈川、11月には東京都内で学会のパネルの予定があります。詳細がわかりしだい告知しますね。

 話が時間ぴったりになってしまい、質疑応答の余裕がなかったのですが、終了後に、ドラマ『ダウントン・アビー』鑑賞にあたって参考になる初心者向けの本を教えて、というご質問をいただいたので、こちらでご返答いたします。
 
 なるべく入手容易で、日本語で、読みやすい本という基準で選びました。ご参考まで。


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図説 英国貴族の城館―カントリー・ハウスのすべて (ふくろうの本)
田中 亮三 増田 彰久
 
 このブログでもう何度も紹介しているのですが、何度でもおすすめしたい。田園の大邸宅(カントリー・ハウス)の美しい写真を用いながら、貴族の暮らしをヴィジュアルに紹介する本。必携。
 

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王室・貴族・大衆―ロイド・ジョージとハイ・ポリティックス (中公新書)
水谷 三公

 まさに『ダウントン・アビー』ど真ん中ぐらいの時代の「英国議会政治」を軸にしながら、貴族のシステムや生活文化、時代の変化を読み解いていく。馬車から自動車へ。『シャーロック・ホームズ』やバーナード・ショーやウェルズの時代。コンパクトな新書ながら参考文献集も本格的で勉強になり、安心して読める名著。


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イギリス貴族―ダンディたちの美学と生活
山田 勝

 英国貴族の日常生活に関する興味を細やかに満たしてくれる本。タイトルのとおり、どちらかというと女性より男性の世界。残念ながら品切れのようだけど、再版または増補改訂版希望。
 

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回想のベル・エポック―世紀末からの夢と享楽 (NHKブックス)
山田 勝

 1870年代から1914年の第一次世界大戦開戦までの「古き良き時代」、ベル・エポックのヨーロッパ文化について幅広く扱った本。


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ある結婚の肖像―ヴィタ・サックヴィル・ウェストの告白 (20世紀メモリアル)
ナイジェル ニコルスン Nigel Nicolson

 ヴィタ・サックヴィル=ウェストは男爵の孫娘として1892年に生まれ、1910年に社交界デビューした(つまりイーディスと同い年、ということになるのかな?)。ひとり娘で屋敷を継げず、財産や継承ををめぐってはいろいろともめた。ヴィタ本人が記した告白の回想録を息子のナイジェルが発見し、解説を加えて彼女の全体像を描き出そうと試みた本。とてもおもしろい読み物でもあり、グランサム伯爵家三姉妹の状況を理解するのにもってこい。これもぜひ再版すべき。むしろ文庫化すべき。


 ついでにといってはなんですが、その、わたしの本もよろしくお願いしますね……正直、わたしが単著として出している過去の本は、おおむね全部、わりとそのまま『ダウントン』副読本にお使いいただけちゃうような内容だと思いますので。ぜひどうぞ。
 
 (われながら偏った活動をしている……という自覚はあります……)
 
 以下折り畳みにて。


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2014年05月20日

英国時代ドラマ「ダウントン・アビー」NHK地上波で放映中



 わたしの仕事を前から見てくれてるひと、このブログに通ってくださっているような「趣味の合う方」には必見の英国ドラマ「ダウントン・アビー」が、2014年5月11日、地上波NHK総合、日曜日23時から始まっています。

1912年。ダウントン・アビー当主、グランサム伯爵のもとにある日突然、舞い込んできたのは、豪華客船タイタニック号沈没の悲報。長女メアリーの婚約者で、将来グランサム伯爵の爵位と財産を継承するはずだった甥(おい)パトリックが、船もろとも帰らぬ人となったのだ。代わりの相続人として現れたのは遠縁の中流階級の青年マシューだった…。

 NHK番組公式サイト http://www9.nhk.or.jp/kaigai/downton/

 DVD発売元公式サイト http://downtonabbey-tv.jp/


 華麗な衣装や美術や小ネタ、考え抜かれた小気味の良いせりふ、デイム・マギー・スミスをはじめとしたすばらしい役者陣の演技、そしてたっぷりじっくりねっとり描かれまくるカントリー・ハウスの舞台裏、家事使用人たちの暮らしぶり! とてもおすすめ。時代考証的に楽しい見どころがいっぱいなので、毎週、ツイッター実況的なことをやっております。勝手に応援隊です。お祭りです。



 お仕事として深くかかわっているというわけではないのですが、DVDの発売元ユニバーサルの公式サイトにちょっとだけ原稿を書いたり、BS Onlineの岸川靖さんのコラムや、NHK番組公式サイト「限嗣相続」の解説もお手伝いしました。



 こんな感じで、「あの海外ドラマ」放映にあわせて既刊に新しい帯をつけていただき、一部の書店店頭では河出書房新社ふくろうの本「英国貴族フェア」が展開されているはず……。いま、絶賛執筆ひきこもり期間中にてぜんぜん本屋さんに行けていないのですが、もし店頭で目撃したら教えてくださいね。



 ついでに、ダウントンのお話だけする予定ではないのですが、6月にはこんな企画もありますのでよろしければ遊びに来てください。緊張。


 ↓以下、twitter実況ログ。録画再生や、今後DVDが発売された暁には鑑賞のおともにどうぞ(2話の分です。1話はあっぷあっぷしすぎてちょっとまとめてみるには耐えない感じだった……)

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2014年04月19日

翻訳書 A・M・ニコル『怪物執事』発売中

 翻訳を手がけた本が無事に発売になりました。

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怪物執事 英国を魅惑した殺人鬼の真実
A・M・ニコル 村上 リコ

【amazon】 / 【楽天ブックス】 / 【紀伊國屋書店】

◆似非(エセ)執事が語る華やかな殺人の記録とその検証。
英国を騒がせたシリアルキラーの心理に肉迫するノンフィクション。

◆1978年、スコットランドでひとりの人間が終身刑を言い渡された。
ロイ・フォンテーン−−本名アーチボルド・ホールは数々の屋敷に執事として入り込んで金品を盗み、実弟をふくむ5人の人間を殺害した。「執事になりすまして主人を殺す」「著名人との華麗でエロティックな交友関係」「男女問わずとりこにする爛れた性生活」など、彼が獄中から語るスキャンダラスな物語はタブロイド誌をにぎわせ、大衆の興味をそそった。
だが、彼の語る華やかな物語は、どこまでが真実なのか。その謎に、“彼自身の証言”と“事実”の両面からはじめて光を当てる。

 出版社公式サイトへのリンク。目次が読めます
 
 『図説 英国執事』のため、使用人の犯罪について調べてまとめていたとき、この本の原書に出会いました。実のところ、調べれば調べるほど、執事が犯罪に走ったというより、犯罪者が執事のふりをしていたというのが正しい状況ではあったのですが……。

 さまざまなフィクション作品に現れる幻影に満ちた執事の実像を解明してみたい、というのが『図説 英国執事』の発端でした。さて、1950年代から70年代末にかけて、執事という職を犯罪に利用したアーチボルド・ホールの場合はどうだったのでしょうか?

 尊敬する海外ドラマ研究家・編集者・ライターの岸川靖さんが読み応えのある解説文を書いてくださいました。なぜ岸川さんなのか? というのは、読んでいただければわかるはず。
 
 ちなみに……(以下余談につき折り畳み)
 
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2013年12月27日

近況報告と『花ちゃんとハンナさん』とムック「英国男子」

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 コヴェントガーデンのクリスマス。

 ごぶさたしております。11月に1週間ほど英国に行って帰ってきました。今回は「エンバーミング博物誌」の黒碕薫さんといっしょで、地方はまわらずロンドンのみでしたが、観劇も博物館めぐりもぎっしり詰め込んで充実の旅になりました。(旅の一部は、近々ちょっといつもと違うかたちでお見せできる予定。昔からわたしのこと知ってるかたはニヤッとできるかも・笑)

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『花ちゃんとハンナさん (KCデラックス)』 山名 沢湖
【amazon】 / 【楽天】 / 【紀伊國屋書店】

 山名沢湖さんの『花ちゃんとハンナさん』コミックスが発売になってます。現代のメイド喫茶で働くことになった花ちゃんのもとに、エドワード時代の英国メイド・ハンナさんが現れて……。ほのぼの可愛く、とてもやさしく、大切に丁寧に描かれたお話です。資料や翻訳などいろいろ協力しました。1巻完結で、山名沢湖作品入門にも、ごぶさたの再会にも最適。どうかよろしくよろしく。


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「英国男子」[雑誌]EYESCREAM2014年3月号増刊

 2014年1月31日に、スペースシャワーBOOKSより、人気の英国男優を集めたフルカラー写真集が発売になります。メインはカバー写真のベネディクト・カンバーバッチさんと、なんとわたしの好きな(もう一つブログを立ち上げ、舞台めあてに2回めの渡英をしてしまうほど大好きな)ベン・ウィショー君! ですってよ! ひええ、ウィショー君の時代が来ちゃったよ。

「そういう時代が来た」、のかどうかはわかりませんが、監修の山崎まどかさんにお誘いいただいて、わたしも80年代以降の流れを考えるエッセイを書きました。ご高覧いただけますと幸いです。


 ことしはクリスマスのエントリを書くぞ、と思っていたのだけど果たせずじまいだったので、こちらのブログを読んで下さっているあのひとの顔を思い浮かべながら、ツイッターでつぶやいていた話を折り畳み以下に貼り付けておきます。

 良いお年を。

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2013年10月24日

「ヴィクトリア時代の室内装飾」と「夜想 少女特集」と活動報告

 ごぶさたしております。いろいろと亀の歩みで活動しております。

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「ヴィクトリア時代の室内装飾‐女性たちのユートピア‐ 展」
インテリアに熱いまなざしが向けられたヴィクトリア時代。台頭してきた中産階級の人々は室内装飾に対してどのような夢を抱いていたのでしょうか。
本展では、ヴィクトリアン・インテリアの再現コーナーをはじめ、当時の室内装飾の様子を窺い知る様々な実物資料をとおして、ヴィクトリアン・インテリアの興隆を支えた女性たちが求めた理想の家庭像を浮き彫りにします。
ギャラリー大阪: 2013年8月25日(土)〜2013年11月19日(火)
休館日:水曜日□10:00〜17:00 □入場無料



 大阪グランフロント内リクシルギャラリーにて開催中の展覧会に協力しました。展示パネルにも一箇所、エッセイ的な原稿を書いてます(メイドの仕事について、署名があるもの)。

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 19世紀の雑誌「ガールズ・オウン」や「カッセルズ・ファミリー・マガジン」などを蔵書から提供し、展示していただいてます。図版を部分的に本で紹介することはあるけれど、実物のかたちではふだんは日の目を見ないものなので嬉しいです。入り口のところで見慣れた本がケースに入ってるのに遭遇してびっくり。普段わりと雑に扱っちゃってるのに立派になって……(笑)。

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 1886年のドールズハウスが可愛い。



『ヴィクトリア時代の室内装飾 -女性たちのユートピア-』

紀伊國屋書店で購入 / 楽天ブックスで購入 / amazonで購入

 展覧会の図録としてつくられたブックレットに「メイドの目で見たヴィクトリア時代のインテリア」を寄稿しています。
 川端有子先生、吉村典子先生の文章がすばらしいのでよろしければぜひ。

 現在発売中の仕事もうひとつ。新しい『夜想』が出ました。



夜想#少女(公式)
「少女と読書――百年前の英国の場合」を寄稿しました。

公式通販で購入 / 紀伊國屋書店で購入 / 楽天ブックスで購入

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 こんな図版とか
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 こんな図版とか
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 こんな写真とかたくさん添えてます(個人蔵)。

 5年前の『夜想#ヴィクトリアン』で書いた原稿は、その後のわたしの方向性を決定づける道しるべになってくれました。今回はどうでしょうか。

 なお『夜想』近況欄でこっそり報告してますが、現在は「上流階級の家庭に潜り込んで殺人を繰り返したという〈怪物執事〉に関する実録本の翻訳」と「貴族の少女たちの日常生活に関する著作」を2014年刊行予定で準備中。どっちもなかなか歯ごたえがあり、あいかわらず苦しんでます。

 そんな折ですが、ベン・ウィショー君が今年2回目の舞台に立つというので、11月にはことし2度目の渡英を敢行します。今回は地方にはいかずロンドンのみ、観劇メインの貧乏旅行の予定。もろもろよろしくお願いします。

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2013年08月02日

『エドワーディアンズ』の舞台となった大邸宅〈ノール〉、100年とすこし昔の姿


『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』
ヴィタ・サックヴィル=ウェスト著 村上リコ訳
【amazon】 / 【楽天】 / 【紀伊國屋書店】

 無事に発売になりました。ヴィタ・サックヴィル=ウェストが1930年に発表した小説の翻訳です。

 1905年の英国。美しい19歳の公爵セバスチャンは、わが身を縛る地位と伝統に鬱屈した思いを抱いていた。彼は恋愛に突破口を求め、〈社交界の花形美女(プロフェッショナル・ビューティー)〉である伯爵夫人シルヴィアとの関係に踏み出していく。ハウス・パーティーに招かれていた探検家のレナード・アンクティルは、そんなセバスチャンをよそ者の眼で観察し、一瞬の交流を果たす。絢爛たるロンドン社交期、大所領のクリスマス・パーティー、若き公爵がたどるさらなる愛の冒険、やがて訪れる新国王の戴冠式……。
 エドワード七世(在位1901〜10年)時代の英国を舞台に、みずからも男爵家の令嬢として上流社会に育った著者が、その体験をあますところなく描き出した実録的ロマンス。フィクションではあるが、20世紀初頭における英国上流社交界のようす、貴族や使用人の暮らしぶり、人びとの階級観や倫理観をうかがい知ることができる貴重なテキストでもある。

 さて。作者のヴィタが、1920年代に深い仲であった同性の恋人にヴァージニア・ウルフがいる。ヴァージニアは、ヴィタを喜ばせるために、彼女と、彼女の育った邸宅〈ノール〉をモデルにして、不思議な中編小説『オーランドー』を書いた。

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『オーランドー (ちくま文庫)』
ヴァージニア ウルフ 杉山 洋子訳

 美しいが、ちょっぴりどんくさいところのある若い貴族が、16世紀のエリザベス一世時代から、小説発表時の1920年代までの長い年月を、恋や戦争や詩作にうつつを抜かし、なぜだか老いないまま、途中で男性から女性に変わりながら、ずっと生き続ける、という架空の伝記物語。

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オルランド 特別版 [DVD]
サリー・ポッター

 サリー・ポッター監督、ティルダ・スウィントン主演で1992年に映画にもなっている。邦題は「オルランド」。こちらではオルランドが老いない理由も付け足してある。それにしてもたいそう美しく、ファニーで、夢のような映画。大好き。

 ヴァージニアから小説『オーランドー』を捧げられたヴィタは喜び、やがて自分でもノールで過ごした少女時代の思い出をもとにした小説を書くことにした。それが『エドワーディアンズ』。つまり邸宅〈ノール〉はヴィタの実家であり、『オーランドー』と『エドワーディアンズ』ふたつの物語が生まれた場所でもある。

 きょう、たまたま別件の資料をそろえていたら『More Famous Homes of Great Britain』という1899年発行の大邸宅案内本に〈ノール〉も載っていることに気がついた。解説文を書いているのはサックヴィル卿。すなわちヴィタの祖父、時期からみて二代サックヴィル男爵ライオネルである。なお、リンク先のinternet archiveでは電子書籍が無料で全文読めてしまう。すごい世の中になった。中身は1902年のアメリカ版らしい。

 せっかくなのですこし画像をご紹介。

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 中庭から見たエントランス。旗がひるがえる。見た感じは現在とほとんど変わらない。ただ、傷みは激しいようで、2012年秋に再訪したときは、あちこち布で覆って修復をすすめていた。

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 逃走を旨とする主人公のセバスチャンが駆け上がっていったかもしれない階段。

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 〈大ホール〉。壁の上部に「家紋の豹」がいる。クリスマスツリーが飾られて、パーティーが行われたかも。

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 〈王の間〉。『エドワーディアンズ』のなかでは〈女王の間〉に変えてある。巨大な四柱式寝台、豪華なカーテンや上掛け、テーブルは銀でできている。六章のクライマックスはここで。

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 〈茶の長広間〉。肖像画がずらりと並ぶ。印象的な場面で繰り返し登場する。「どれがアンクティルさんに似ていたかしら?」「みんな同じ額に入って、壁の端から端まで渡した綱飾りに名前が書いてあるでしょ。ドレイク、ハワード、ローリー――どれだったかしら?」

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 ヴィタは1892年生まれで、この大邸宅案内本『More Famous Homes』の出版は1899年。つまり写真とイラストは彼女が7歳くらいのときのノールである。そして、小説『エドワーディアンズ』は1905年から始まり、主人公のセバスチャンはその時点で19歳なので、設定上は彼が13歳くらいのころということになる。物語の舞台となった場所がどんな姿をしているかわかると、想像が広がる。挿絵のつもりでお楽しみいただければ幸いである。
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2013年06月22日

『エドワーディアンズ』装画について


『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』
ヴィタ・サックヴィル=ウェスト著 村上リコ訳
【amazon】 / 【楽天】 / 【紀伊國屋書店】


 もうじき発売の新刊翻訳書です。一部のオンライン書店に書影がアップされました。内容紹介文もふくめ、随時更新されていくかと思います。なお、詳しい内容や出版の経緯についてはひとつ前の記事をごらんください。

 今回の装画として使用している絵は、ジョン・シンガー・サージェントによる「ウォリック卿夫人とその息子」1905年。制作年は時代設定にばっちりです。登場人物の誰かのイメージということではないのですが(主人公である美青年公爵セバスチャンの少年時代、と思ってください。いや栗色巻き毛じゃないけれど……)。

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 twitterでもすこし触れましたが、この絵のモデル、第五代ウォリック伯爵夫人デイジーというひとは、当時の上流社交界で数々の浮名を流した美人で、皇太子時代のエドワード七世の愛人でもありました。ちなみに19世紀の流行歌「デイジー・ベル」のモデルとも言われているみたいで、歌になぞらえて「デイジー、デイジー」と繰り返し女の子に呼びかける場面をいろんなところで見る気がします。「華麗なるギャツビー」にも出てきたし、あとはやっぱり「2001年宇宙の旅」で宇宙船のコンピュータがこの歌を歌う場面が忘れがたく……って、カバーの話からずいぶん脱線してしまいました。

『エドワーディアンズ』とは、エドワード時代の人びと、という意味。エドワード七世時代の上流社会の模様をうつしとった社交界小説です。ちょっとねたばれをすると、小説の冒頭に「この本のなかのいずれの人物も、完全に架空の人物ではない。」という堂々たるはしがきがあって、つまり登場人物にはそれぞれモデルがいます。メインのキャラクターには独自の名前が与えられているものの、それとは別に当時の有名人、貴族、政治家、芸能人、作家や画家などの名もどんどん出てきて忙しいくらい。このウォリック卿夫人と画家のサージェントも、名前だけ、何度か繰り返し登場します。

 19世紀末から20世紀初頭、華やかで贅沢でちょっと軽薄な、エドワード七世の仲間集団の空気を代表するような女性と、美しい子どもの肖像。何かしら縁とつながりを感じる表紙ができました。

【amazonで購入】 / 【楽天ブックスで購入】 / 【紀伊國屋書店で購入】
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2013年06月21日

ヴィタ・サックヴィル=ウェスト『エドワーディアンズ』来週発売

 翻訳を手がけた小説が無事に本になり、来週発売されます。



『エドワーディアンズ 英国貴族の日々』

ヴィタ・サックヴィル=ウェスト著 村上リコ訳
【amazon】 / 【楽天】 / 【紀伊國屋書店】

 1905年の英国。美しい19歳の公爵セバスチャンは、わが身を縛る地位と伝統に鬱屈した思いを抱いていた。彼は恋愛に突破口を求め、〈社交界の花形美女(プロフェッショナル・ビューティー)〉である伯爵夫人シルヴィアとの関係に踏み出していく。ハウス・パーティーに招かれていた探検家のレナード・アンクティルは、そんなセバスチャンをよそ者の眼で観察し、一瞬の交流を果たす。絢爛たるロンドン社交期、大所領のクリスマス・パーティー、若き公爵がたどるさらなる愛の冒険、やがて訪れる新国王の戴冠式……。
 エドワード七世(在位1901〜10年)時代の英国を舞台に、みずからも男爵家の令嬢として上流社会に育った著者が、その体験をあますところなく描き出した実録的ロマンス。フィクションではあるが、20世紀初頭における英国上流社交界のようす、貴族や使用人の暮らしぶり、人びとの階級観や倫理観をうかがい知ることができる貴重なテキストでもある。

 原書は1930年初版。著者はヴィタ・サックヴィル=ウェスト(1892〜1962年)。ひとことでは言い尽くせない、とても多くの顔を持つ女性です。サックヴィル男爵家令嬢にして作家、詩人、造園家、ヴァージニア・ウルフの同性の恋人……そしてウルフの小説『オーランドー』のモデル。

 夫のハロルド・ニコルソンとは深い絆で結ばれながら、夫妻ともに婚姻外に同性との恋を求めました。ヴィタは1920年ごろにヴァイオレット・トレフューシスという女性との駆け落ち事件を起こしていて、その経緯を自身で記した秘密の日記を、息子のナイジェルが編纂した『ある結婚の肖像』も出版されています(平凡社から邦訳あり。ものすごく面白いのでぜひ増刷・再発してほしい)。

 ヴィタといえば〈シシングハースト〉、というくらい、ガーデニングの世界でもよく知られています。彼女はこの小説を出したあと(非常によく売れたのでたぶんその収入で)、シシングハースト・カースルという古い建物と地所を買い取り、夫と二人で庭造りにはげみました。現在ではナショナルトラストに管理され、彼女のつくった庭を見るためだけに世界各地から訪問するひとが絶えません。

 本人があまりにも個性的で魅力的なので、文学史上のゴシップめいた関心はひいてきたけれど、小説の翻訳はいままでありませんでした。あったら読みたいよ、ないなら訳させて、と企画書を書いて持ち込み、本邦初訳のはこびとなったわけです。

 サリー・ポッター監督、ティルダ・スウィントン主演の映画版『オルランド』(1992年)が大好きなこと。ヴィタの生家〈ノール〉に訪れたことがあり、こちらも大好きなこと。この小説をぜひ訳したい、と思った理由はさまざまあります。しかしやはり、長い伝統を持つ貴族の家に生まれ育った著者が、100年ほど昔の上流社会の暮らしぶりをこと細かに書いているということが大きな魅力でした。英国貴族と家事使用人の生活について、いろいろ読んだり考えたり書いたりするようになって10年くらいになりますが、『エドワーディアンズ』は小説ながら、風俗・習慣を知るソースとして利用している本にしばしば出会います。

 小説の翻訳は初めての体験で、ページ数以上に苦労してしまいました。ぜひお手に取っていただけると幸いです。
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2013年05月10日

国書刊行会版『ジーヴス』シリーズ電子書籍特設サイトにコラム寄稿&近況

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 ヴィタ・サックヴィル=ウエストの生家ノールの館。昨年秋訪問。

http://www.ebookjapan.jp/ebj/tag_genre.asp?genreid=30691

 表題のとおり、電子書籍販売サイトのebookjapanにて国書刊行会版の「ジーヴス」シリーズの電子版販売がはじまり、特設サイトができました。せんえつながらコラムを寄稿しました。楽しんで書きました、よろしければどうぞ。声優にして超読書家の池澤春菜さん、『プリーズ・ジーヴス』の漫画家・勝田文さんのメッセージを読めますよ。



 もうすぐ発売のDVD『天才執事ジーヴス』、楽しみです! つづきが出るかどうかは売り上げ次第なのでまだまだ応援。

 なんだかジーヴス&ウースター&フライ&ローリーのサイトみたいになってきましたが、仕事もしております……。

 ヴィタ・サックヴィル=ウエストの小説『エドワーディアンズ』を翻訳し、河出書房新社より6月刊行予定でがんばってます。また追々発信していきますね。

 来週に迫りましたが5月18日(土)に東京都仙川の白百合女子大学にてイギリス児童文学会東日本支部・春の例会でお話させていただくことになりました。会員以外のかたも参加費を払ってお入りになれます。ええもう緊張しております。

 枢やなさんのコミック『黒執事』毎月お手伝いしています。コミックは16巻が発売中。寄宿学校編です。というかすっかりクリケット編です。徹底して新しいことに挑戦し続ける姿勢がほんとうにすごいです。

 山名沢湖さんのコミック『花ちゃんとハンナさん』も資料出しでお手伝いしてます。講談社の隔月コミック誌「キスプラス」で連載中。4月売りの5月号が発売中。エドワーディアンの英国メイド・ハンナさんが、現代日本のメイド喫茶で働く花ちゃんのもとに現れて……。ふわふわのんびりにみえて芯はしっかり、心を込めて描かれた可愛らしい作品ですよ! 応援いただけますと幸いです。

 そして5月の下旬から6月の上旬までまたすこし留守にする予定。もろもろよろしくお願い申し上げます。
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2013年02月13日

2013年もよろしくお願いします(近況と予定と萌え告白)

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 そろそろバレンタインデーに差しかかろうというのに年始のごあいさつもせずにおり、まことに申し訳ございません……ことしもよろしくお願い申し上げます。

 2013年の予定は、翻訳書をふたつ、書き下ろしをひとつ。書店に並ぶところまでいけるのは一冊か二冊ということになりそうですが、なんとか本を出して生きていきたいと思っております。本年もどうかご支援のほどお願いいたします。(あと、ちょっとひとまえでお話させていただく機会もあるかも。どきどき)



 友人の漫画家・山名沢湖さんが、新作ストーリー漫画の連載を開始しました! 講談社「Kiss+(キスプラス)」現在発売中の2013年3月号から開始です。タイトルは「花ちゃんとハンナさん」現代の女の子・花ちゃんのもとに、昔のメイドのハンナさんが現れて……というちょっと不思議なお話です。わたしもハンナさん側(英国ヴィクトリア時代末期)の資料出しをしたり、いろいろ相談に乗ったり、せっせとお手伝いしております。

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大判カード型写真(キャビネット・カード)。1900年前後かな。漫画本編とは関係ありませんが資料として出したもの。

 構想はずいぶん前からあって、「こんなお話考えたんだ」「いいねいいね! あんなネタもこんなネタも入れてよ!」ってだいぶ前から盛り上がってきたお話なので、できれば長く続けてもらえるように、寄り道トリヴィアなんかをいっぱい混ぜ込む余裕ができるように(笑)、よろしければ応援お願いします!


「Meet the Quatermaster」

 昨年末に見にいった「007 スカイフォール」でQ役のベン・ウィショーさんにまんまとフォールしツイッターでひとしきり騒いだあげくにもうひとつブログまで始めてしまいました……あちこち不義理をしまくってるのにすみません……


「情愛と友情(Brideshead Revisited 2008)」

 でも、やってること自体にはあまり反省しておりません。どさくさにまぎれて告白すると、あまり前面には出しませんでしたが、心のなかでは常に何かしらに萌えてはおりました。友だちにすら言ってないような、墓のなかまで持っていかなければいけないようなものまで含めて……。

 おまけ、バレンタインカードに関連する最近のつぶやき。

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バレンタインカードを選ぶ。1881年家庭雑誌の挿絵から。 http://t.co/TSpT0bve
posted at 09:37:45


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続き。ちょっとそこまで投函しに行くだけにしては後ろ裾引きすぎお洒落すぎなのはファッション解説ページの挿絵だから。六角形のポスト。 http://t.co/37ShQSPT
posted at 09:39:24


六角形のポストは「六角形のポスト」としか認識してなかったけど、ペンフォールズという名前があったのかhttp://t.co/i1OUn41F
posted at 09:49:10



というわけで、お仕事がんばりますので温かい目で見守っていただけますと幸いです……。
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2012年10月16日

『図説 メイドと執事の文化誌』発売中

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図説 メイドと執事の文化誌
シャーン・エヴァンズ著 村上リコ訳 原書房
【amazon】 / 【楽天ブックス】 / 【紀伊國屋書店】

 翻訳を担当した本が、9月末に発売されました。順調と聞いていますが、発行部数が少なめなので、あまり店頭で出会わないという方もいらっしゃると思います。また、ちょっといい値段でもあり、内容をしっかり吟味したい、という方も。そこで、中の構成と図版の使われ方などをご紹介したいと思います(独断で)。なお、本書の大まかな位置づけ、出版の経緯、原書情報などの基本事項についてはひとつ前の記事にてご紹介しています。

 目次と項目はこんな感じです。

はじめに

◆第1章 使用人としての生活

 階上と階下

◆第2章 階下の登場人物たち
 
 家内の序列/家令/執事/シェフ/コック/キッチン・メイド/スカラリー・メイドとトウィーニー/ホール・ボーイ/スティルルーム・メイド/ハウスキーパー/ハウスメイド/レディーズ・メイド/従者/フットマン/運転手/ランドリー・メイド/家庭教師/ナニーとナースメイド

◆第3章 「大きなお屋敷」の世界
 
 使用人区画/春の大掃除/害虫・害獣/カントリー・ハウスの火災/技術革新が使用人にあたえた影響/領地でとれた食べ物/キッチンの通路を曲がって

◆第4章 日々の職務と大きな催し
 
「階上」の朝食/淑女たちの昼食/アフタヌーン・ティー/晩餐のための着替え/「晩餐のしたくがととのいました」/舞踏会とパーティー/旅行と使用人/王室の訪問/「大きなお屋敷」のクリスマス

◆第5章 使用人の暮らし
 
 使用人を採用する/スタッフの引き抜き/給料と支払い周期/チップと役得/「見えない」使用人/使用人の復讐/使用人との結婚/使用人舞踏会/使用人の自由時間/日曜日ごとの礼拝/使用人の休暇/病気の使用人/国民保険法/老齢/救貧院

◆第6章 終わりの始まり
 
 なぜ終焉を迎えたのか/使用人の不足/移民/「淑女手伝い」――使用人の代わりとして/第一次世界大戦

謝辞
訳者あとがき
主要参考文献
索引


◆第1章 使用人としての生活 では、過去の英国における大邸宅の世界で、家事使用人として生きるというのはどういうことだったのか、彼女ら彼らはどのような位置づけであったのか、歴史を押さえつつ簡単に説明します。

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メイドになる少女たちにとって「お屋敷づとめ」とは?

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エドワード七世時代に改装されたキッチン。

◆第2章 階下の登場人物たち では、19世紀末から20世紀初頭までの時代のカントリー・ハウスの家事使用人を、職種ごとに分けて解説しています。図版はすべてカラー。モノクロの記録写真であっても、セピアの元の色をきれいに再現しています。

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執事の作業室と燕尾服。

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ハウスキーパーとスティルルーム・メイドがジャムなどをつくるスティルルーム。

◆第3章 「大きなお屋敷」の世界 は、英国の大邸宅の構造と、個別の部屋の機能にフォーカスをあてています。

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長屋の屋外トイレ。キッチン、トイレ、バス、醸造室……。珍しい写真がたくさん。

◆第4章 日々の職務と大きな催し は、100年前のカントリー・ハウスの主人たちの豪奢な(そして意外に気苦労も多い)暮らしぶりについて。朝食、昼食、午後のお茶、晩餐といった日常から、パーティー、旅行などの季節のイベントまで。華やかな写真が多い章です。

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飾り付けられた晩餐室。

 ◆第5章 使用人の暮らし は、コックやメイドや執事たちの日常生活について。それぞれの邸宅に残る個人の証言が生きるパートです。

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質素な使用人専用階段。メイドは姿を隠して働くことを求められた。

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ナショナル・トラストの保有する救貧院。いつか見に行きたい……。

◆第6章 終わりの始まり は、使用人が姿を消してゆく過程について。少し駆け足ぎみではありますが、貴族と使用人の世界が第一次世界大戦をどのように体験したのかという、最後のパートが白眉。時代背景はドラマ「ダウントン・アビー」の世界に重なります。

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20世紀初頭のメイドと犬。
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カントリー・ハウスは兵士たちの療養所として使われた。

 私の前著『図説 英国メイドの日常』や『図説 英国執事』で触れたおなじみのエピソードもありますが、初めて接する情報も多く、翻訳しながらとても勉強になりました。これは、各地の大邸宅を保存・修復する過程で収集した、家ごとの記録や、独自の口述ソースを活用しているからです。

 先月、英国に旅行し、イングランド北部の「クラッグサイド」という邸宅を訪ねました。「使用人の集合写真を展示していたら、そこに写っていたコックとフットマンの身元が新たにわかった」「その人物の血縁の人びとに話をきくことで、貴重な情報がつぎつぎに判明」ということがあったそうで、「使用人の暮らし」にフォーカスをあてた小さな展覧会を開いていました。さまざまな史料を大切に保管し、一般に公開し、地域の人びとと交流するなかで、口述歴史の糸は紡がれつづけているのですね。

 英国時代もののドラマや映画やアニメなどを見て、背景に興味がわいてきた方にも、私のこれまでの本をすでに読んでくださった方にも、興味深く読める本になっているはずです。ぜひお手にとっていただけますと幸いです。
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