2012年09月09日

シャーン・エヴァンズ著『メイドと執事の文化誌』9月下旬発売予定。

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図説 メイドと執事の文化誌
シャーン・エヴァンズ著 村上リコ訳 原書房
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 今月下旬に出る予定の新しい本です。翻訳を担当しました。

 原書は2011年秋に発売されたばかりの新しいもので、原題は“Life Below Stairs: In the Victorian & Edwardian Country House”。19世紀のヴィクトリア女王時代から、20世紀初頭のエドワード七世時代までの英国を対象とし、貴族や地主の大邸宅における「階下の暮らし」、つまり家事使用人の生活について書かれた本です。

 著者のシャーン・エヴァンズ氏は、ヴィクトリア&アルバート博物館、デザイン博物館、そしてナショナル・トラストに勤務した経験のある方で、原著の版元もナショナル・トラストブックス。ということで、自然や景観、歴史的建築物を保護するボランティア団体である「ナショナル・トラスト」とは非常にかかわりの深い内容になっています。

 ナショナル・トラストは、現在では300以上の歴史的な建物を保有しているそうです。宮殿のような有力貴族の大豪邸から、牧師館や農場や、小地主の小ぢんまりしたお家まで。こうした家には、過去にはそれぞれに異なる私生活があったはずです。建物そのものだけではなく、日記や帳簿や、そこに暮らした人々の口述記録も大切に管理されています。著者はそのような、はかなくもめずらしい資料に触れて、過去の日常生活の再現を試みています。

 写真が主役の本ではありませんが、図版は120点ほどおさめられています。執事の仕事場、ヴィクトリア時代のキッチン、使用人の寝室や浴室などの写真をカラーで豊富に掲載しているのは、ナショナル・トラストの本ならでは。「よそゆき」の顔をした豪奢な応接間や大階段を自慢にする家は多いものの、こうした「ふだん使い」の部屋や「使用人の領域」を残している邸宅は少ないので、こうしてまとめて鑑賞できるのは、読者として非常に嬉しいものです。

 初めに声をかけていただいたときには監修を、というお話だったのですが、このような原著の内容に魅力を感じたため、ぜひ自分で翻訳もさせてほしいと立候補しました。楽しくも大変な道のりではありましたが、無事に完成の運びとなりました。どうぞよろしくお願いします。

 訳をすすめるほど英国に行きたくなり、校正を繰り返すほどナショナル・トラスト熱が募って募って困りました(笑)。というわけで、もう少ししたら二週間ほど旅に出てきます。本書に登場した場所もいくつか訪問する予定。近年ではネットが使える宿が多いので、ツイッターで現地報告できたりするかもしないかも。
posted by rico at 22:45| 仕事 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする