
『ヒストリーボーイズ [DVD]』 たいへん良かったです。
1983年、英国北部の町シェフィールド。校長の意欲は高いが庶民的な雰囲気の漂う学校(グラマースクール)で、名門オックスフォード/ケンブリッジ大学進学組に集まった男子生徒たち。文学を愛する知識豊かな老教師へクター(セクハラ)や、対照的なまでにテクニカルでロジカルな若き教師アーウィン(こちらも実は……)、女性教師のドロシーたちから、多くのことを学びながら合格をめざしていく。アラン・ベネット脚本、ニコラス・ハイトナー監督。
基本ラインは受験勉強して合否がでるまでのお話なのに、なんでこんなに面白いのか!
もともと高い評価を受けた戯曲作品で、役者は舞台初演時のキャストだそうです。セリフのひとつひとつが輝いていて、呼吸もぴったり。歌のように詩のように調子よくポンポン会話が進みます。
実際、音楽・映画・文学・思想・詩の引用が多い作品で、気づかなくても問題なく見られますが、細かく調べていったら楽しそうです。古い映画のワンシーンを生徒たちが即興で演じて先生にあてさせたり、ことあるごとに詩や警句を口にしたり。トマス・ハーディの『鼓手ホッジ』の朗読と解釈を行うシーンが印象に残りました。
八〇年代ミュージックにはそんなに詳しくないのですが、BGMとしてジョイ・ディヴィジョンとかスミスとかの代表曲が選ばれていたようでした(好きな方にはぐっとくるのでは)。そういう同時代的な描写と、老教師じこみの古い流行歌を歌うシーンなどの対比具合にも、文化が移ろっていくこと――体内にとりこみ、自分なりに消化して、次の世代に手渡していくこと――という主題があらわれていたと思います。
登場人物それぞれの背景と役割を、ちょっとステレオタイプな匂いがしてしまうくらいにきっちり割り振ってあるところに興味深いものを感じました。「ヘンリー八世に破壊された修道院の廃墟」に遠足に出かける場面では、「敬虔なキリスト教信者」「同性愛者」「ユダヤ教」「イスラム教」の立場からサクサクとコメントしながら見物していきます。それでその会話の背後のビジュアルときたら、もう、たまらん美しさ。ロケ地は
ファウンテンズ・アビー!あこがれの世界遺産にバス遠足ですよ。どれだけ贅沢なの、と羨望です。
とはいえ、教育論、歴史とは、などのかたい話題で終始するわけではぜんぜんなくて、生徒たちは(先生たちも)みんな自分たちの個性に即して楽しんだり悩んだりしながらいきいきと日々をすごしています。そして――男子高校生たちの青春群像、となったら、必然的に恋愛話はかかせません。本作では女の子関係はおきまりのシモネタトークとちょっとしたチャレンジにかぎられ、主要なドラマは同性愛。リーダー格のデイトン君がアーウィン先生に迫るシーンは、何かいろいろすごかった。身体的接触はないのに(むしろひっきりなしに距離を取り直す感じ)、たいへん色っぽかったです。「
眼鏡は最後だ」のセリフで、一緒に見てた人と顔を見合わせて爆笑してしまいました。何の最後なのか、眼鏡がどうなるのか、ぜひDVDでご確認ください。
エンディングロールはルーファス・ウェインライトのけだるい歌声でしっとり。いいなあ。合うなあ。最後までごちそうさまでした。

『The History Boys』Original Soundtrack
ぜんぜん関係ない話ですけど、スポーツの話が好きなラッジ君、耳の大きさといい濃い目のなまりといい、前に習っていた英語の先生に雰囲気が似てて、出てくるたびに顔が浮かんで困りました(笑)。